「新牛丼」を披露、吉野家値上げの成算 肉は熟成させながら解凍、タマネギも増量

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肉だけでなく、タレも改良

「実は今回の新しい牛丼作りが本格的にスタートしたのは2月中旬ごろだった」と吉野家の関係者はこう明かす。

これは、ゼンショーHDが牛丼並盛の価格を発表した2月27日よりも前のこと。安部社長は他社の戦略にかかわらず、当初から高付加価値品で勝負する方針だった。

4月以降、大手3社の中で吉野家が最も値段が高くなる。品質を上げて価格も上げる戦略に踏み切った背景には、高単価の「牛すき鍋膳」(580円)の成功も大きいようだ。

既存店売上高は足元好調

吉野家は昨年12月に牛すき鍋膳を発売して以降、既存店売上高は2月まで3カ月連続で10%以上の増収を達成している。「鍋の好調と今回の価格改定が直接関係するというわけではないが、付加価値の高いものを求めるニーズがあるということが理解できたのは大きい」(吉野家の門脇純孝・専務取締役)。

もちろん、品質の高い牛丼を出したからといって、好調が続くとは限らない。安部社長も4月から2~3カ月は前年比で客数はマイナスになるとの見方を示す。しかもこれから気温が上がると、牛すき鍋膳の需要は細る。

新しい牛丼で、どれだけ客を引きつけることができるのか。吉野家の真価が問われる。

(撮影:今井康一)

又吉 龍吾 東洋経済 記者

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またよし りゅうご / Ryugo Matayoshi

2011年4月に東洋経済新報社入社。これまで小売り(主にコンビニ)、外食、自動車などの業界を担当。現在は統括編集部で企業記事の編集に従事する傍ら、外食業界(主に回転ずし)を担当。趣味はスポーツ観戦(野球、プロレス、ボートレース)と将棋。

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