保育所は、なぜ需要があるのに増えないのか? 経営してみてわかった、待機児童が減らないワケ

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なぜ、大都市圏で保育所が不足するのか

経営に携わると、大都市圏で保育所が不足する理由は簡単にわかります。場所を食う割には儲からない、言い換えれば土地生産性が低すぎるのです。

そもそも保育所には、国の基準を満たす認可保育所と、その基準を満たさない認可外保育所(無認可と呼ばれることもあります)の2種類があります。認可保育所の場合、0歳児(≒育休明け)には1人当たり3.3平方メートル、子ども3人に1人の保育士が必要です。これを確保しようと思うと、10階建ての保育所ができるならともかく、民間企業が参入しようと思っても採算がとれません。

もちろん、参入してくる企業はあります。どうするかというと、基本的には人件費を削るケースが多く見られます。時給1000円ほどで保育士の資格を持たない人をたくさん雇うのですが、結果として、子どもを連れて行くと、担当の保育者が替わっていたとか、公設民営で年度が替わると別の業者になっていた、といったことが起きます。

「そんなら、補助金増やせよ」と思われるかもしれませんが、若者や子育て世代の投票率が高齢層に比べて著しく低いために、政治家は高齢者をより重視します。福祉の予算を高齢者から割いて、子育て関係に回すのは至難の業なのです。

私が保育所の運営にかかわるようになったのは、2002年ごろのこと。男女共同参画社会基本法との関係で、大学の取り組みの一環として保育所整備が認められ、大学の予算で2004年に新しい園舎ができました。

一方で私たちも、父母と保育士の代表が集まる運営委員会を中心にして、自分たちの保育を守るために、運営に参画することになりました。何よりも、民間の業者に丸ごと委託されるようなことになっては困ると心配したからです。

そこでNPO法人を立ち上げ、大学の建てた保育施設に「入居」するかたちをとり、東京都の認証保育所として、学外の利用者にも開かれた形で、運営をすることになりました。

認証保育所というのは、東京都独自の制度で、国の定める認可保育所の基準を満たさなくても、都の定めた基準を満たせば、認可外とは区別して補助金を出す仕組みです。特に大きいのは、園庭がなくても認められる点。東京で広い園庭(認可園では必須)を持つことは難しいために、ビルのワンフロアだけでも、補助金が出る仕組みにしたものです。めでたし、めでたし……、と言いたいところですが、問題はそれほど簡単ではありませんでした

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