解決に大きな前進、新幹線「青函トンネル問題」 独自取材で判明した「貨物列車との共存策」

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単線案と並行して、新幹線の高速走行と貨物列車の走行を両立させるダイヤの検討も2019年秋ごろから始まった。すると、意外な事実が判明した。前述のとおり、当面の方策として貨物列車の走行が少ない時期に限って新幹線を高速走行させる案が進んでいるが、ダイヤを工夫すれば時期を区切らなくても高速新幹線と貨物列車の両立が可能だというのだ。

現在、1日に青函トンネル内を走行する列車の本数は、新幹線が上り下り合わせて26本(臨時列車除く)。貨物列車は臨時列車入れて上り下り合わせて51本ある。青函トンネルの保守作業の時間帯を深夜0時から6時まで確保したうえで、新幹線が青函トンネル内を終日にわたって高速走行すると、貨物列車が支障なく走れるのは1日に4~6本のみだ。

貨物列車の本数維持は可能

しかし、新幹線の高速走行時間帯を区切って検討したところ、興味深い事実が見えてきた。

青函共用区間を走る貨物列車(写真:sunrise/PIXTA)

例えば青函トンネルにおける高速走行時間帯を午前のみ4時間程度に限れば、高速走行できる新幹線は上下で9本。一方で貨物列車は51本すべてが走れる。また、高速走行時間帯を夕方~夜の3時間程度に限れば、高速走行できる新幹線は5本で、貨物列車はやはり51本走れる。

高速時間帯以外の時間帯は、最高時速160kmの新幹線が走行するので新幹線の上り下りの本数には変更はないが、高速走行時間帯を走行する新幹線に需要が集中することも想定され、旅客輸送における課題は残る。

すべての貨物列車が走れるとはいえ、貨物列車が現行のダイヤどおりというわけにはいかず、出発時間を遅らせたり、途中で待ち時間を長くしたりするなど、新幹線の高速走行に支障が出ないように時間をずらして走行する必要がある。

例えば新幹線午前高速走行の場合、定時出発できる貨物列車は上下合わせて8本のみで、出発が5時間以上遅れる列車は18本ある。また、定時到着できる貨物列車は上下合わせて6本のみで、到着が5時間以上遅れる列車は25本ある。

新幹線午後高速走行の場合は、定時出発できる列車は37本で、出発が5時間以上遅れる列車は1本のみ。定刻どおり到着できる列車は上下合わせて28本、到着が5時間以上遅れる列車は6本という試算結果となった。

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