ラオックス、あまりに痛い新型コロナの直撃 中国人観光客の急減で免税店のリストラ断行

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多角化戦略は売上高で見る限り一定の成果が出ている。免税店ラオックスが中心のインバウンド事業は全体の売上高の約30%、中国での越境ECのグローバル事業が約15%、シャディと婦人靴の生活ファッション事業が約50となった。

ただし、越境ECのグローバル事業はまだ利益を生んでおらず、生活ファッション事業と商業施設運営や飲食のエンターテインメント事業は赤字。2019年12月期の実績を見る限り、現状は免税店のラオックスしか柱がない状況だ。

今期の業績見通しは示せない状況

複数の収益柱を育てる前に、大黒柱のラオックスが新型コロナ問題で大打撃を受けた。婦人靴や飲食も客数が減っている。「新型コロナウイルスによる影響で経営環境が急変している」という理由から、2020年12月期の業績見通しの公表を見送っている。

新型コロナの問題が浮上する前、2020年12月期に黒字転換する可能性も見いだしていた。

2019年12月にラオックス店舗でも不振の7店を閉鎖。赤字だった商業施設も優良テナントが年末に入居したことなどで採算改善にメドを付けた。婦人靴の店舗でも大幅リストラを計画していた。新型コロナ問題でそうした黒字化シナリオが完全に狂ってしまった。

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幸い2019年12月に親会社への増資で84億円を調達しており、資金繰りにはまだ余裕がある。前述のラオックスでの人員削減のほか、シャディでも20人の希望退職を募集、婦人靴事業でも2020年度中に約40の閉鎖(全店舗は140)を計画する。昨年末の店舗リストラも含めて、固定費を20億円以上引き下げてしのぐ覚悟だ。

それでも、利益面で免税店ラオックスの依存から脱却できていないだけに、新型コロナ問題が長引けば、一段のリストラを迫られそうだ。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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