日本の自動車メーカーの先行きは安定軌道へ《ムーディーズの業界分析》

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コーポレートファイナンス・グループ
VP−シニア・アナリスト 臼井 規

 ムーディーズは日本の自動車業界の見通しをネガティブから安定的へ変更した。今回の見通しの変更は、ムーディーズの格付け対象企業4社の今後の12~18カ月間の信用状況についてのムーディーズの見方を反映したものである。ムーディーズは分析に当たり、市場環境の安定化、企業の堅固な事業基盤や技術戦略の継続的な進展、良好なブランドイメージやコスト削減の継続的な実施などに焦点を当てている。

主要国の多くで政府による自動車購入支援策の実施により、自動車需要は安定したが、依然として、以前の水準に比べると低いままとなっている。足下、円高による輸出への打撃、上昇を続ける高水準の失業率による購買力の低迷が継続しているが、支援策の多くはすでに終了、あるいは間もなく終了するため、日本の自動車メーカーにとって、世界需要の持続的な回復の見通しは不確実である。一方、供給サイドでは、在庫を抑制するために2009年1~3月に生産台数を半減させたトヨタ自動車をはじめとして、各社は段階的に生産台数を引き上げている。市場環境がいつ前回のピークまで回復するかについては依然として不確実だが、ムーディーズでは最悪期は過ぎ去り、コスト削減の進捗、在庫調整終了後の稼働率の上昇、金融環境の改善により、自動車業界は回復に向かうと考えている。

電気自動車とハイブリッド車へのシフト

昨今、2010年の電気自動車市場投入が話題になっているが、トヨタのプリウスに代表されるハイブリッド車が、低燃費の環境対応車への需要の移行を牽引するとムーディーズは予想している。電気自動車を広く普及させるためには、販売補助金や、充電網などのインフラ整備を幅広く行う等、政府からの経済的支援が必要である。政府がどの程度の支援を行うかは、原油価格次第とみられる。原油価格が高騰すれば、電気自動車への円滑な転換を促すインフラ整備がより進捗しよう。例えば、電池交換施設のネットワーク整備は、電気自動車の8時間という充電時間の問題を解決する一つの方法であり、こうした施設がなければ、一度の充電では160キロメートル程度しか走行できない。

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