ウェアラブルで、人のグーグル化が進む? グーグルがアンドロイド向けOSを発表へ

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CarPlayにみるアップルの姿勢との違い

グーグルグラスは、身につけていても、利用しないときはディスプレイが消灯している。例えば、着信があったり、首を見上げて戻したり、タッチパッドに触れたりする等の動作をすると、ディスプレイが点灯し、音声入力などを待ち受ける状態になる。必要なときに、必要な情報や機能をすぐに呼び出せ、極力ハンズフリーで操作できるというのが、グーグルグラスでの体験ということになる。

裏を返せば、いきなりグーグルグラスを手渡されても、グーグルグラスを使って「必要な情報や機能」というものをイメージできないと、何をして良いかわからないかもしれない。ウェアラブルデバイス全般に言えることだが、端末の形や身につける場所、そのデザインはとにかくとして、「何をすべき端末なのか」という目的性が先に来なければ、なかなか難しいように感じる。

グーグルはウェアラブルデバイス向けアンドロイドのソフトウエアプラットホームは提供したが、この「何をすべきか」という部分のイノベーションを開発者やユーザーに委ねている。一方アップルにもウェアラブルデバイスに関する噂が絶えないが、グーグルのようにプラットホームを用意して様子を見る姿勢とは違うアプローチを取ろうとしているようだ。

アップルはジュネーブで開催されたモーターショーで、iPhoneと自動車の車載機とを連携させるCarPlayを発表し、各メーカーはこれに対応した車両を展示した。CarPlayは運転中にiPhoneの機能を利用できるようにする規格で、Siriのように音声で操作したり、ハンドルやシフトノブ周辺などに設置されているコマンダーを利用する。

しかし現在は、電話、メッセージ、地図とナビゲーション、音楽に加えて、SpotifyやiHeartRadioなどの音楽系のアプリのみが利用可能な状態だ。今後もアプリは増えていくが、アップルが追加するか否かを判断するという。自動車内でのスマートフォン利用は、安全面への十分な配慮が必要であり、そこに配慮されたアプリのみ、アップルが利用の許可を決めるということだ。

ここでも、アップルの意向や制限の影響を受けることになり、開発者にとって自由さがあるアンドロイドとの姿勢の違いを明確に発見することができる。しかしCarPlayは「運転中に安全にiPhoneを利用してもらうこと」に強い目的がある。

グーグルとアップルの取り組み方の違いは、タブレットやスマートフォン以外の領域でも存在し続ける。スマートフォンに関しては、グーグルが世界的に見て大きなシェアを確保する事ができたが、米国や日本などの先進国市場でiPhoneがトップシェアを確保し、市場の利益の大半を得ており、「勝ち」の定義も異なっている。

今年からウェアラブルデバイスが、我々の生活にどのように影響するのか、そこにプラットホーム的な影響がどう関わるのか、注目していきたい。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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