新型肺炎を武漢で真っ先に告発した医師の悲運 12月に警告も、当局から処罰され本人も感染

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財新記者:1月28日、最高法院が公式アカウントで武漢の8名の”デマを流布した者”に対する処罰が適切であったのかどうかを評論する記事を発表しました。あなたは恐らくこの8名には含まれていないと思いますが、当時この記事を見て何か感じるものはありましたか?

李医師:最高法院の記事を見た時は、かなりホッとしました。その後は病院から受ける処分についてあまり心配しなくなりました。健全な社会に必要なのは様々な声です。公権力を利用して過度に干渉されるのには同意できません。

最高法院の記事は評価できるものだと思います。事細かに審査が行われているのが分かりましたから。(8名に含まれているのかについては)あまり注視していません。ネットで最も拡散され、最高法院の記事にも引用されていたのは確かに私の発したメッセージのスクリーンショットだったからです。

財新記者:1月29日、武漢警察は8名の“デマを流布した者”に対する処罰について発表しましたが、そこではあなたの受けた訓戒については触れられていませんでした。どう見られていますか?

李医師:警察の発表についてはコメントすることは出来ません。する意味もないと感じます。自分がその8人に含まれているかどうかも定かではありません。

回復したらまた第一線に立ちたい

財新記者:人によってはあなたのことを大規模なアウトブレイクが起こる前の”警告者”、“内部告発者”だと呼んでいます。それについてはどうお考えですか?

李医師:それには当たりません。私はただ知り得た情報を友人たちに伝えたかっただけで、深い意味はありませんでした。

財新記者:今後はどうされるおつもりですか?

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李医師:回復したらまた第一線に立とうと思います。現在もウイルスは拡散しているので、脱走兵にはなりたくありません。

財新記者:ご家族の現在の状況はいかがですか?

李医師:妻は外地の実家に行っていて、武漢は封鎖されているのでまだ戻って来られません。両親は恐らく近々退院出来るはずです。しばらくは他の人も頼れませんし、2人は普段はとても健康なので退院後は自分たちで何とかやるのだと思います。電話をしても健康状態は良さそうで、自分で動くことも可能なようです。

(財新記者:覃建行)

※原文初出の記事は1月31日に公開

【2020年2月7日8時00分追記】2月6日の21時過ぎ、李医師に対して人工肺ecmoを使用して救急治療を行ったが、22時前後、彼が死亡したとの情報が伝わり始めた。23時、財新記者は武漢市中心医院に駆け付けたが、深夜0時、巡回中の看護師は「だめだ、でも中ではまだ緊急措置を行っている」と話した。7日深夜2時、専門家が診察に入り、外で待っていた李医師の同僚も一緒に中に入った。2分後、この同僚が出てきたので、財新記者が「李医師はいかがですか?」と尋ねると、彼は深く頭を下げて一言も発せず、黙々とその場を離れた。

財新編集部

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Caixin

2009年設立の財新は中国の経済メディアとして週刊誌やオンライン媒体を展開している。“独立、客観、公正”という原則を掲げた調査報道を行い、報道統制が厳しい中国で、世界を震撼させるスクープを連発。データ景気指数などの情報サービスも手がける。2019年末に東洋経済新報社と提携した。(新型肺炎 中国現地リポート「疫病都市」はこちらで読めます

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