ウクライナ情勢がさらに悪化すると影響甚大

本村真澄・JOGMEC担当審議役に聞く

ホワイトハウス前でもウクライナ系住民によるロシアへの抗議デモが行われた(ロイター/アフロ)
ウクライナ情勢が緊迫度を増している。昨年11月に親ロシアのヤヌコビッチ前政権がEU(欧州連合)加盟の条件となる協定の署名を見送り、それに反発する反政権デモで前政権は崩壊。2月27日に親欧米の暫定政権が発足した。対するロシアは3月1日に議会上院がウクライナへの軍事介入を承認、ウクライナ南部のクリミア自治共和国を実効支配した。米国はロシア政府関係者の渡航禁止や資産凍結などの制裁措置を発動し、EUも段階的制裁を決議。ロシアも報復措置を表明するなど事態は先鋭化しつつある。3月16日にはクリミアでロシア編入を問う住民投票も実施される予定だ。
一方、ロシアは世界最大の天然ガス産出国であるなど資源大国であり、欧州はもとより日本とも資源エネルギー分野で関係は深い。ウクライナ危機の経済的影響についても、今後の対ロ制裁がガス禁輸などの強硬措置へ拡大されるかで大きく左右される。エネルギー問題を中心にロシア情勢に詳しい独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)調査部の本村真澄・担当審議役に話を聞いた。
 

 

――ロシアによるクリミア実効支配の意図をどう見るか。

ロシアは、2010年のウクライナに対する天然ガス値引きの見返りとして、クリミアのロシア海軍基地(セバストポリ軍港)の使用権延長(17年から25年間)を得た。その合意が、親欧米の暫定政権によって反故にされるリスクを考え、予防的に先手を打った形だ。暫定政権は民衆蜂起による革命政権であり、政策が極端に振れやすい。ロシアの行動はその強い反作用ともいえる。

実際、暫定政権はロシア語を準公用語とする言語法を廃止し、ウクライナ語のみを公用語とした。ロシア系住民は二級市民扱いとなってしまう。苦しい立場に置かれるロシア系住民を保護することが、ロシアがクリミア(ロシア系住民が6割以上でロシアへの帰属意識が強い)に介入する大義となった。かつてバルト3国においてロシアを公用語から外したことに関して、EUも民族主義を助長し、不安定要素になるとして反対した経緯がある。 

ガス輸出の6割がウクライナ経由

――ウクライナ危機がさらに深刻化するリスクは。

ウクライナの重要性は、ロシアから欧州へ輸出される天然ガスの大半がウクライナを経由していることにある。かつては欧州向け輸出全体の8割がウクライナ経由で、残り2割がベラルーシ経由だった。2011年から北のバルト海を通るノルド・ストリームというパイプラインが稼働したため、ウクライナ経由は6割に低下。今年はノルド・ストリームの稼働率が上がり、約5割になる見通し。さらに、今年から黒海を経由するサウス・ストリームが着工される予定で、ロシアはウクライナの影響力を下げるべく努力してきている。

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