悩めるソフトバンク、綱渡りの米国市場攻略

Tモバイル買収実現に向けロビーイングに乗り出す

 幾度となく修羅場をくぐってきたソフトバンクの孫正義社長が、また大立ち回りを演じようとしている。

3月11日、孫社長はワシントンDCに乗り込み、プレゼンテーションを行う。タイトルは「米国の無線通信業界の現状とグローバル競争の展望について」。米国の通信業界のいびつさを訴えるのだ。

ソフトバンクは昨年7月、米国の携帯通信3位のスプリントを1.8兆円で買収したばかり。さらに4位でドイツテレコム傘下のTモバイルUS買収をもくろんでいた。ところが、2月3日に会談した米国連邦通信委員会(FCC)委員長は、4社から3社になると競争環境が損なわれることを理由に突っぱねた。

「米国には大手4社があるが、激しい競争環境ではない。上位の2事業者(ベライゾン・ワイヤレスとAT&T)が寡占状態をエンジョイしている」。2月の決算説明会で、孫社長は不満をぶちまけた。11日も練りに練ったプレゼンで寡占2社を批判し、米国のメディアを味方につけようとするはずだ。

Tモバイルがまさかの躍進

孫社長が焦っているのは、米国市場で嵐のような激しい顧客争奪戦が勃発しているためだ。暴れているのは、ソフトバンクが買収をもくろむTモバイルである。

同社の躍進が始まったのは昨年4月だ。アイフォーンの取り扱い開始と同時に、業界慣習の契約期間2年縛りを撤廃。一定額を支払えば、端末代金の残額を負担しなくても年2回まで新しい端末を購入できる買い替え支援サービスや国際ローミングの無料化を発表、他社ユーザー奪取に絞った戦略に打って出た。

その成果は目覚ましい。通信収入の多くを占めるポストペイド(後払い)契約数は急増し、2013年4~6月期、7~9月期ともに60万件超の純増を記録。10~12月には86万件に拡大し、プリペイドなどを含めた純増数は164万件と業界首位のベライゾンに肩を並べた。

Tモバイルを率いるジョン・レジャーCEOは「業界の異端児」と評される。ツイッターでライバル批判を繰り広げ、自身がかつて勤めていたAT&T主催のパーティに飛び入りするなど、つねに話題を集める人物だ。世間の関心を引き寄せ、上位を狙い撃ちする姿は「かつてのソフトバンクのマーケティング手法とうり二つ」(業界幹部)だ。

また、レジャーCEOはかつて、ソフトバンクが提携していた海底ケーブル会社グローバル・クロッシングのCEOを務めていたこともあり、ソフトバンクとは不思議な因縁がある。

Tモバイルの親会社であるドイツテレコムは米国での通信事業から撤退する意向であり、当局の承認さえ得られればスプリントとの統合はスムーズに進む可能性が高い。

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