味の素「希望退職者募集」で考える会社員の行方 経営危機ではない企業が動き始めている

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人生100年時代、自分に新たなキャリア人生があるのであれば、どのような選択肢があるのか? 確かめてみようとする人もたくさんいます。

現在の職場での仕事、これまでの職場での仕事を踏まえて、自分にはいったいどのような可能性があるのか。今の仕事と今後の可能性、両方を天秤にかける機会として活用してみたり、自己分析を行えるツールを活用して自分の棚卸しを行ってみるのです。

管理系の仕事が長かったにもかかわらずサービス業の現場に向いているとか、営業系の仕事に向いていると思っていたが業務分析の仕事が適職であるなど、自分も気がつかなかった可能性がみえてくることがあります。

例えば、筆者が人事コンサルティングの仕事で、経営幹部の該当職務が適職であるかを分析する場合。思考・行動特性に加えて、仕事への興味から適職度を測るのですが、周囲から見ると適職に見える人が実は違っていたという場面に遭遇することがあります。

本人にフィードバックすると、仕事的にはそれなりにこなせるが、ストレスを抱えていた、適職でないのに我慢して長く仕事をしていた……と、現在の仕事が適職でないと感じている、そのことを思い出したと回答してくれたりします。

これまでやってきた仕事の延長線というだけで、今後の選択肢を考えるのはもったいないと感じます。もっとストレスがない仕事があるかも、別の適職が見つかるかもと模索してみて、そのうえで会社にしがみつくという選択に戻ってもいい気がします。

違う職種への転職だとつらくなる?

ちなみに年齢が高くなるにつれ、転職するにあたって、職種を転換する度合いは大きくなっています。コンサルティング中にお会いした再就職活動中のSさんは、事務職の経験しかなかったのですが、提示された職種は事務職以外の仕事ばかり。できない、無理、やりたくないとネガティブ思考になりかけましたが、生活のこともあり「あえて選ぶなら」と消極的に決めた職場に再就職。

ところが想定以上にやりがいを感じて、今では「この仕事こそ適職かも」と言い切るくらい。

Sさんに限ったことではなく、まったく異なる仕事に移ったシニアに、現在の業務への満足度を聞くと、不満と感じている人は想像ほど多くはありません。

できるかぎり条件を広げて適職を探し、再就職をしてみると「意外に居心地がいい」というケースが少なくないことを踏まえておくことは大事かもしれません。

70歳ぐらいまで働く時代になろうとしています。1つの会社でキャリア人生を貫くことに固執することなく、長く働くためにも、機会を広げる準備をして、有意義なキャリアを描いていきたいものです。

高城 幸司 株式会社セレブレイン社長

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たかぎ こうじ / Kouji Takagi

1964年10月21日、東京都生まれ。1986年同志社大学文学部卒業後、リクルートに入社。6期トップセールスに輝き、社内で創業以来歴史に残る「伝説のトップセールスマン」と呼ばれる。また、当時の活躍を書いたビジネス書は10万部を超えるベストセラーとなった。1996年には日本初の独立/起業の情報誌『アントレ』を立ち上げ、事業部長、編集長を経験。その後、株式会社セレブレイン社長に就任。その他、講演活動やラジオパーソナリティとして多くのタレント・経営者との接点を広げている。著書に『トップ営業のフレームワーク 売るための行動パターンと仕組み化・習慣化』(東洋経済新報社刊)など。

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