アップルは「クルマ市場」で勝てるのか? CarPlayで自動車に進出するアップル

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SiriとともにiOS 6で起きた変化として、Google Mapsから自社のマップへの移行があった。クルマの中では、ナビゲーション機能は非常に重要な要素のひとつだ。

地図の充実度についてはGoogle Mapsが格段に上を行くが、筆者が暮らす「米国西海岸、サンフランシスコ周辺で利用している限り」においては、アップルの地図とナビゲーションで不便を経験したことはまだない。アップルのマップには、グーグルが買収したWazeのようなユーザーからのレポートは反映されていないが、すでに渋滞情報や事故情報、通行上の注意などの情報は反映されており、実用レベルに達していると言える。

そのほか、ハンズフリーでの通話やメッセージのチェックなど、iPhoneそのものに備わっている機能も、CarPlayから利用することができる。また、クルマの中で楽しむ音声のサービスやアプリへの対応も始まっている。アップルのPodcasts、iHeartRadioやSpotifyといったストリーミングラジオ、Stitcherというニュースやスポーツなどが聴けるラジオアプリが対応しており、今後も増えていく予定だ。

モバイルとモービルのサイクルの違い

スマートフォンは1人1台の普及をしており、アプリによるエコシステムが花開く新しい消費の場が生まれている。アップルのおひざ元で主たる市場としてとらえている米国では、多くの都市で自動車がほぼ1人1台の環境となっており、最も基本的な交通手段(すなわち「足」)としての機能を満たしている。そのうえで、ブランドやデザイン、スタイル、性能、環境配慮といった条件のバリエーションが広がっている。

この2つの領域の接近は、さほど驚くことではなかった。

たとえば、米国で新しい電気自動車ブランドとして立ち上がったテスラは、これまでの内燃機関を備えた自動車を捨て、ゼロから電気自動車を作り出した。そうした中で、既存の自動車では採用されなかった車の機能の集中管理やネットワーク対応を果たしている。自動車にもかかわらず、ソフトウエアアップデートによって自動車の機能が向上したり最適化されるという感覚も、完全にスマートフォンのそれと同じだ。

モバイルとモービルの間で決定的に違うのは、本体の価格と、そこからくる買い換えサイクルだ。個人のスマートフォンの買い換えサイクルは2~3年であるのに対し、自動車は10年を超える、より長いサイクルで利用されることもある。

このサイクルの違いを、アップルのCarPlayがどのように埋めるのか、非常に興味がある。

カーインフォマティクスの技術も、ナビゲーションからグーグルの自動運転までさまざまだが、筆者が2011年に米国に引っ越して購入したのは2005年モデルのSUVで、ナビは搭載していなかった。クルマが納車されるときのオプション次第、もしくは中古で購入する場合、必ずすべてのクルマがスマートフォンに対応したり、最新のOSで連携するとは限らないのだ。

こうしたサイクルの違いは、別の効果を生み出す可能性もある。CarPlay対応の車載器をつけた車を購入した場合、スマートフォンのライフサイクルを超えても、引き続きユーザーはCarPlay対応のスマートフォン、すなわちiPhoneを選び続けてくれる可能性が高まるのではないだろうか。

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