南米の最貧国ガイアナが2020年に大化けする 巨大原油開発でIMFが前年比86%の成長予測

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ニューヨークからジョージタウンへの直行便も近年、増設されている。米系航空会社では2018年にアメリカン航空が運航を開始、2020年4月にはジェットブルー航空も新たに就航する予定だ。ガイアナは南米で唯一公用語が英語である。しかもアマゾン地域で英語が公用語である国は他にないため、知られざる秘境の観光スポットとして、今後、観光産業の発展にも期待がかかる。

原油生産とともに急成長に期待できるガイアナだが、同国の経済発展には混迷する政治、資源の呪い、国境紛争などリスクもある。

ガイアナは17世紀以降、主にオランダの植民地であったが、19世紀初めから1966年の独立までは英国の植民地であった。そのため、英連邦に属している。植民地時代の奴隷の子孫がアフリカ系ガイアナ人。奴隷制度廃止後にサトウキビ畑の労働者としてガイアナが契約労働移民として受け入れたのがインド人であった。国民の約4割を占めるインド系と約3割を占めるアフリカ系の人種の間では独立前から対立がみられ、ガイアナの政治は今日まで混沌としてきた。

人種は職種にも影響し、インド系ガイアナ人は官僚や産業界、アフリカ系ガイアナ人は軍・警察でのプレゼンスが高い。政治では初めて自由選挙が行われた1992年以降、より人口が多いインド系の「人民進歩党(PPP)」が政権を握ってきた。しかし、2015年にアフリカ系の政党「国民統一のためのパートナーシップ(APNU)」が、多人種で構成される「変化のための同盟(AFC)」と連立を組んだことで勝利し、23年ぶりの政権交代が起きた。

今年3月の大統領選に伴う政治リスク

ただし、今も政情は不安定だ。一院制の国会では65議席のうち、与党は33議席、野党は32議席と拮抗し与党体制は脆弱だ。与党で連立を組むAFCのインド系議員の1人が造反し、2018年12月に内閣不信任決議案が可決された。その後、政府が提訴し司法で争われ、最終的には最高裁判所にあたるカリブ司法裁判所(CCJ)が2019年6月に内閣不信任決議を有効とする判決を下した。APNUのデビッド・グレンジャー大統領は判決を受け入れ、総選挙を前倒しし、2020年3月に実施する予定だ。

総選挙では野党PPPが優勢との見方が支配的だが、行方は不透明だ。総選挙で仮に野党PPPが勝利し、政権交代が起きた場合、負けた与党APNUを支持するアフリカ系国民が暴動を起こすリスクも懸念されている。2020年に政権を握る政党は原油歳入によって国民生活を豊かにする施策を実行する機会に恵まれるため、長期政権となる可能性もある。2020年3月の総選挙はガイアナにとって中長期的にも極めて重要だ。

ただし、多数の新政党が乱立していることからも、APNUまたはPPPのいずれも新政権の樹立のためには他の政党と連立を組まなければならない。再び内閣不信任決議案が国会で提出されるなど、政治が混乱する可能性がある。

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