シェア過去最高。輸入車ばかりがなぜ売れる? 強いブランド力に加え、品ぞろえが充実

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以前から日本でプレミアムブランドとして浸透しているBMW。13年の販売台数は、小型車ブランドの「ミニ」が牽引し、グループとしては過去最高を更新したものの、BMWブランドとしては及ばなかった。「過去最高を更新した06年に比べ、輸入車全体で手の届きやすいモデルが広がり、競争が激しくなった」(日本法人のアラン・ハリス社長)。とはいえ、今年の販売は「2ケタ増を目指す」(ハリス社長)と意欲的。過去最高記録を視野に入れる。

注目されるのが、BMWブランドとしては初となる前輪駆動(FF)の小型ハッチバック車「2シリーズ アクティブツアラー」だ。今年後半には日本で発売される予定。燃費は1リットル当たり20キロメートル超と、自社最高水準だ。「この車で新しいセグメントを開拓できる」とハリス社長は意気込む。

安定した成長を続けている「ミニ」も4月には7年ぶりのフルモデルチェンジ車を投入。消費増税後となるが、販売拡大に貢献しそうだ。

市場の価値観が変化 走りやデザイン重視

国内市場全体の縮小傾向が続く中、国産車の牙城を着実に切り崩しつつある輸入車勢。マークを取ってしまうとどこの車かわからないと評される日本車に比べ、輸入車はそれぞれの個性が明確だ。フロントグリルやボディ形状といった外観から、運転しているときの感覚に至るまで、ブランドごとに「かくあるべき」という基準がはっきりしている。「日本メーカーは安くて高品質な車作りをしてきた。ただそれはボリュームゾーンでの話。車に対する市場の価値観は変わってきており、みな個性を求めている」(アウディジャパンの大喜多社長)。

環境規制を受け、輸入車も燃費が向上しており、エコカー減税対象車も増えている。「(ハイブリッドではなく)やっぱりガソリンエンジンがいい、燃費も1リットル当たり15キロメートルもあればいい、と思う人が戻ってきている」(VGJの庄司社長)。

走行性能に関しても、ドイツ車は本国の速度無制限道路「アウトバーン」に堪えうる品質で作られており、車体剛性や足回りの設計思想が日本車と異なる。価格や燃費など、輸入車のデメリットだったものが改善されたうえに、こうした「ドイツ品質」が見直されてきている。

欧州で日本車の販売に携わった経験もあるヤナセの井出社長は「先進国の自動車市場は、輸入車も含めて人々が乗りたい車を何でも手に入れられるようになるべき」と持論を展開する。欧米では外国ブランド車の割合は3割を超え、自国ブランド偏重は日本だけ。「輸入車シェアは、早ければ今年10%台に、将来的には15~20%になる可能性が十分にある」と井出社長は見る。

もともと強いブランド力に加え、経済性も高めてきたドイツ勢の好調は、まだしばらく続きそうだ。

週刊東洋経済2014年3月8日号<3日発売>より)

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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