トヨタの自動車サブスク「KINTO」大苦戦の真因 全国展開しても認知度2割、申込み1日平均6件

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運営会社側は今回、具体的な総費用(諸費用、任意保険込み)の比較も示した。例えば、初めて自動車を所有する22歳の人がライズを購入した場合は3年間で約166万円、月額では約4万6000円(3年後の残価を差し引いて試算)かかる。キントを利用した場合は3年間で約143万円、月額では3万9820円となる。月額で6000円ほど負担が軽い計算だ。

しかし、全体の契約に占める18~29歳の割合は20%、10歳刻みでほかの世代と比較しても際立って多いわけではない。現時点では「サブスク」としての商品性を十分に訴求できているかという点では疑問が残る。

西日本のトヨタ系販売会社の幹部は「正直、サブスクである付加価値がどこにあるかがわからない。値段の感覚としても『高い』というのが一般相場」と手厳しい。音楽や動画の配信は聴き放題、見放題だが、キントは1車種を3年間乗るという意味では乗り換え放題ではない。キントのパンフレットには「コミコミ定額」という字が大きく躍るが、「月々定額」を謳うことが多い個人向けリースとの違いを打ち出せているとは言いがたい。

自動車保険込みはメリットなのか

この幹部は「最大のメリットは保険料だが、メリット享受は等級の低い人のみ」とも指摘する。これに対し、キントの小寺社長は「自動車保険の等級が高い人が払う保険料と、キントの利用料に含まれる自動車保険料の金額はさほど変わらない」と話す。

KINTOの小寺信也社長は「車を所有することのネガティブな部分を少しでも軽減して、若年層の車離れに歯止めをかけたい」と強調する(撮影:今井康一)

小寺社長によれば、キントの加入者全体で見たときには、年齢が高い人が保険料を月に数百~千数百円上積みすることで、若い人の保険料を圧縮する構図になるという。金額面での差はほとんどないにしても、キントを使う場合は自身の保険等級が更新されないのをデメリットと感じる人もいる。自動車保険は通常6等級からスタートし最高は20等級。3年間無事故であれば等級は3つ上がるが、キントは何年使っても等級は上がらない。

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