資生堂、エビちゃん共に「専門店改革」へ走る 新経営陣は国内販売の閉塞感を突き破れるか

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今回の新商品発売は、資生堂にとって大きな意味を持つ。前田新造・会長兼社長兼CEO(最高経営責任者)が取りまとめた「新専門店政策」を、4月1日付で新たに社長兼CEOに就任する魚谷雅彦氏が実行に移すタイミングと重なるからだ。

新専門店政策とは、全国に1万店強ある専門店との間に新たな取引制度やクラス(格付け)制度を導入。専門店のモチベーションを高めながら、両者一体で店頭売り上げの拡大を進める構想だ。

この政策では、これまでより専門店がベネフィークを安く仕入れることができるよう改定し、専門店がベネフィークの扱いを増やすことを狙う。さらに、ベネフィークブランドの取り扱いなどを参加条件として、「資生堂プラチナショップ」という店舗名称を設置し、同店舗向けの教育支援を充実させる方針。プラチナショップは当初3000店となる見通しだ。

異業種参入で国内の競争激化

「新社長のもとで、マーケティングを中核とした会社にしていきたい」と語った前田氏

国内の化粧品市場はここ数年、2兆2000億~2兆3000億円程度で安定的に推移している。だが、富士フイルムホールディングスなど異業種の参入によって競争が激化。一方で、専門店を経由しない、ドラッグストアなど量販店経由の売り上げが伸びてきている。

こうした状況下、資生堂の国内売上高は2007年3月期以来、7期連続で減収が見込まれている。中でも、国内売上高の2割強を占める専門店経由の売り上げ増が喫緊の課題となっている。その意味で、今回のベネフィークブランドの新商品と一連の専門店改革は、国内立て直しのカギになるわけだ。

発表当日、都内で行われた記者発表会で前田氏は「ベネフィークは専門店の力を借りながら育ててもらったブランド。新社長のもとで、マーケティングを中核とした会社にしていきたい」と語った。間もなくスタートを切る魚谷体制で、その実行力が問われる。

二階堂 遼馬 東洋経済 記者

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にかいどう りょうま / Ryoma Nikaido

解説部記者。米国を中心にマクロの政治・経済をカバー。2008年東洋経済新報社入社。化学、外食、ネット業界担当記者と週刊東洋経済編集部を経て現職。週刊東洋経済編集部では産業特集を中心に担当。

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