英国人の階級意識に火をつけた衝撃レポート 16万人参加、700万人アクセスの新階級調査

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次に年齢だが、それぞれの階級の平均年齢の違いは示唆に富んでいる。年齢と社会階級との関連が顕著に表れているからだ。

文化資本と社会関係資本は豊かだが経済資本に乏しい「新興サービス労働者」の平均年齢は32歳で、他の階級よりかなり若い。

これは、若年層は高い能力があっても高収入の仕事から締め出されている可能性を示唆している。

エリートの平均年齢は57歳と高い

一方、「エリート」の平均年齢は57歳で、資本が経年的に蓄積されることがわかる。

しかし、年齢を重ねるだけで誰もがエリートになれるわけではないことは、「伝統的労働者階級」の平均年齢が66歳であることが示している。

7つの階級は、単純な年齢による区分けではないが、それでも年齢と強く結びついているのだ。

年齢は従来認識されていたよりも、いっそう強く階級構成と関連している。さまざまな資本が経年的に蓄積されることを考慮すれば、したがって人生の特定の段階にある人々が他の年齢層より恩恵を受けることを考えれば、これは不思議なことではない。年齢にもとづく階級の格差には説得力がある。

「エリート」に年長世代が多いのも驚くことではないし、20代の若者たちは所得、貯蓄、住宅関連資産のどれもほとんど持っていないから、「確立した中流階級」や「技術系中流階級」である可能性が低いのも当然のことだ。

ここで重要なのは、文化資本と比較した場合の経済資本の量ということでは、若年層より年長世代が恵まれているということだ。だからこそ、「新興サービス労働者」は興味深い集団なのだ。彼らは年齢が低いことを特徴とするからである。

この認識から、年齢と階級の関係についての基本的な理解が得られるだろう。つまり、イギリス社会についての現在の私たちの議論を形成しているのは、従来のような中流階級と労働者階級の境界線という古びた問題などではなく、まったく別の問題だということだ。

マイク・サヴィジ ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス社会学部教授

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Mike Savage

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス社会学部教授と同大学国際不平等研究センター共同所長を兼任。
専門は社会階級と不平等分析。 マンチェスター大学、ヨーク大学で教鞭を執った後、2014年より現職。
著書に、Identities and Social Change in Britain since 1940: The Politics of Method, Oxford University Press,2010; Class Analysis and Social Transformation, Open University Press,2000; Culture, Class, Distinction, Routledge,2009(共著)(『文化・階級・卓越化』 磯直樹ほか訳、青弓社、2017年)ほか。

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