トヨタ「エスティマ」が生産終了を迫られた理由 一世を風靡したミニバンの「苦悩と末路」

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そうした中で、ハイブリッド化によりプリウスと共に未来を見せてきたエスティマがミニバンという車体構造を活かしてEV化やPHEV化を率先して開発していれば、伝統的な特徴ある外観や室内空間の未来的思考を原動機でも明らかにする商品力を得られただろう。

エスティマにハイブリッド車が加わったとき、その価格はガソリンエンジン車に比べ高かったが、それでもエスティマハイブリッドに乗る家族は、子どもたちの未来が明るいことを願いながら、誇らしく走らせていたような気がする。

ミニバンブームが去ったのではない

現行エスティマは、マイナーチェンジを繰り返しながら安全基準を満たすなど努力は重ねてきたが、未来への夢や期待を体現させるミニバンではなくなっている。ここに浮上の機会を失った理由があるだろう。

e-POWERで新たなハイブリッドを提示した日産「セレナ」(写真:日産自動車)

日産は、「セレナ」に「e-POWER」を追加したことで販売を一層力強くしている。一方、「エルグランド」はアルファード/ヴェルファイアに比較し、存在が薄い。そのエルグランドも、e-POWERやEV化を図れば、その存在はより際立つだろう。

ミニバンブームが去ったのではなく、時代の先端を行く姿を見せれば消費者は戻ってくる可能性がある。そうした中、ただ消えることを選択したエスティマは、実に惜しい1台だ。

御堀 直嗣 モータージャーナリスト

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みほり なおつぐ / Naotsugu Mihori

1955年、東京都生まれ。玉川大学工学部卒業。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。日本EVクラブ副代表としてEVや環境・エネルギー分野に詳しい。趣味は、読書と、週1回の乗馬。

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