トヨタ6年ぶりベア実施へ 14年春闘の労使交渉が始まった

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トヨタ自動車では6年ぶりのベアが実施されることになりそうだ。

デフレ脱却にはベアの実施が不可欠と、安倍晋三首相自らが旗を振る今年の春闘。そのリード役となるトヨタ自動車の交渉には例年以上に注目が集まっていた。

トヨタ自動車は2月19日に1回目の労使協議を行った。会社側からは社長以下、役員、部長の一部を合わせて100人弱、組合からは執行役員、職場委員長の200人強が出席。労使協議の後、トヨタの宮崎直紀専務役員は「4000円は率直に言って大変高い水準。6.8カ月も高い。ビックリした」と述べた。

組合の要求を牽制した格好だが、宮崎専務は、「相撲で言えば、がっぷり四つに組んだ状態。これからしっかりした議論に時間をかけていく」とした上で、ベアに関しては「否定しているわけではない」とも発言。ベア実施そのものを問題視する考えは示さなかった。

ベア負担はどれだけ重いか

トヨタ自動車労働組合は、2014年の春闘で月額賃金のベア4000円を含む1万1300円の引き上げと年間6.8カ月の一時金を要求して いる。労組がベアを要求するのは、4000円を要求した09年以来の5年ぶり。その時は、リーマンショック後で業績が急激に悪化しており、ベアは実施されなかった。

月額賃金を引き上げると、一時金や残業代や諸手当などにもはね返る。トヨタの場合は月額賃金を1000円上げると労務費トータルでは2倍強、月額ベースで2000円ほど会社負担が増える。今回、トヨタ労組が要求している4000円分のベアならば、年間の負担増は60億円程度。一方、トヨタは14年3月期で営業利益1兆2200億円(単体ベース)を見込んでいる。

経営側が負担に感じるのは、最近のオーストラリアの問題もあるようだ。トヨタは2月に入り、1959年からオーストラリア工場で行ってきた車両とエンジンの生産を17年末までに中止すると決めたばかり。労働組合の力が強い同国での高い労働コストが断念に至った最大の理由だった。

19日の労使協議の場では、豊田章男社長がオーストラリアの生産中止について言及した。ベアを容認したとしても、組合要求にどこまで応じるかはこれからの議論次第。会社側の回答は3月12日に予定されている。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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