キリスト教「牧師家庭」で育った26歳女性の葛藤 総人口の1.5%という人々の知られざる生活

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日曜の礼拝中は、いつも中学、高校生のお姉ちゃん、お兄ちゃんたちが小さい子どもたちと遊んでくれて、ひかりさんも大きくなってからは、下の子どもたちを妹、弟のようにかわいがってきたそう。

「キリスト教は嫌だけど、そこに来ている人たちはとても好きだった」のです。

そんな「実家」のような場所が、父の異動によって突然消失してしまう事実に、ひかりさんはおののきました。慣れ親しんできた教会に、家族同然の信徒さんたちはみんな残っているのに、自分の両親だけがそこからいなくなってしまうのです。

「このままだと、みんなとのつながりが断たれちゃうと思って、それで洗礼を受けたんです。動機が不純かもしれないですけれど。正式にクリスチャンになって、その教会の教会員になれば、うちの親が別の教会に移っても、私はずっとつながりを持てるので」

自分で決めたから、今こうやっていられる

かくしてひかりさんは、今では毎週日曜、以前住んでいたその教会を訪れているそう。毎回「お母さん、お父さん、元気?」と聞いてくれる信徒のおばあちゃんがいることや、昔彼女の面倒を見てくれたおばちゃんたちが、今でもひかりさんのことを気にかけてくれることが、とても支えになっているといいます。

なお、ひかりさんの洗礼において最もよかったのは「自分で選べた」点でした。キリスト教では、本人の意思にかかわりなく、親が幼児洗礼を受けさせてしまうことがよくあるのですが、お父さんは娘のひかりさんに、それをしなかったのです。

というのは、お父さん自身も父親(ひかりさんのおじいちゃん)が牧師で、幼児洗礼を受けさせられていたのですが、父親はそれがものすごく嫌だったため、自分の子どもには同じことを決してすまい、と心に決めていたのです。

お父さんがひかりさん自身の決断を待ってくれたことに、彼女はとても感謝しているといいます。「もし無理やり決めさせられていたら、今ごろ絶対、教会に行っていないです。自分で決めたから、今こうやっていられる」のだと話します。

ひかりさんに、いま振り返って、小さい頃にどんなふうだったら悩まずに済んだと思うか?と尋ねると、2つのことを話してくれました。

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