日本株に向かい風、法人減税や日銀緩和必要 風向きを変えるにはどうすればいいのか

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2月17日、海外株と比べて日本株の重さが目立っている。写真は都内の株価ボード。14日撮影(2014年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 17日 ロイター] -海外株と比べて日本株の重さが目立っている。米経済の減速懸念が強まり、世界の景気敏感株として敏感に反応。一方で米低金利の長期化観測が浮上し、米株は戻りを試しているが、ドル/円の圧迫要因にもなるため、日本株にとっては功罪両方の材料だ。

短期筋のポジションなどからみて海外勢がアベノミクスに完全に失望したという証拠はまだないものの、法人税減税や日銀の追加緩和がなければ、年初から続く円高・株安の「風向き」を変えるのは難しいとみられている。

米低金利観測、日本株には功罪

ソチオリンピックのノルディックスキージャンプ男子ラージヒルでは、日本の葛西紀明選手が風をうまく味方につけて銀メダルを獲得したが、日本株は強まる向かい風に伸びを欠いている。

前週末の米株市場で、S&P500<.SPX>は1月に付けた終値ベースでの史上最高値まで約10ポイントに接近、ナスダック<.IXIC>は2000年以来の高値で引けた。しかし、週明けの日経平均<.N225>はその流れに乗り切れず80円高止まり。昨年末の高値からは依然として約2000円低い水準にとどまっている。

日本株に向かって吹き付ける「逆風」の1つは米経済減速の懸念だ。日本株の世界の景気敏感株としての性格は変わらず、昨年末に楽観ムードが広がる中で急ピッチで上昇した反動もあり、下げがきつくなっている。米国の経済指標が下振れているのは、寒波による一時的影響との見方も多いが、投資家の不安を払しょくするデータはまだ出てきていない。

金融相場の「残り香」がまだ強い米株市場では、「悪いニュースは良いニュース」との反応が復活、米低金利の長期化観測が浮上し、米株を押し上げている。グローバル投資家のリスク選好センチメントを維持してくれるという点では日本株やドル/円にとっても悪い材料ではない。だが、日米金融政策のスタンスという点からは、ドル/円の圧迫要因であり、日本株の重しとなる。

10年米債利回りは2.7%付近で推移しており、ドル/円は米株高にも関わらず、101円台に下落。日本企業の10─12月期の企業業績は悪くなかったが、円安が止まってしまえば、来期以降の増益継続予想は描きにくくなる。本日発表された10─12月国内総生産(GDP)でも輸出の伸びは小幅だった。輸出数量の伸びは依然として鈍い。

海外短期筋のスタンス変化

海外投資家のスタンスが変化したことも日本株に対する「逆風」の1つだ。東証の主体別売買動向のデータでは、今年1月、外国人投資家は約1兆1696億円と単月ではここ10年で最大の売り越し。昨年15兆円を買い越した海外勢のスタンスが転換したことは需給面で強い向かい風となっている。

前週は5週ぶりに412億円の買い越しに転じたが、先物を3769億円売り越しており、「海外短期筋の売り姿勢は変わっていない」(大手証券)という。

日経平均の下げは、米経済の変調や新興国問題の浮上を嫌気した海外短期筋の利益確定売りが主体であり、昨年11月上旬から昨年末までに上昇した分の約2000円を吐き出しただけで、アベノミクスに対する失望までには至っていないとの指摘もある。「年初から下がったのは日本株だけではない。アベノミクスへの失望というのは後付け的な理由ではないか」(米系証券)という。

大和証券・投資戦略部課長代理の熊澤伸悟氏は「日本株の下落は海外短期筋の裁定解消売りの影響が大きい。中長期スタンスの海外投資家は買い越し基調を続けている」と指摘。海外投資家は小泉純一郎元首相時の2003年4月から07年7月までに約39兆円買い越していることをみても、昨年ですべての海外の中長期投資家が日本株のアンダーウエートをニュートラルに戻したわけではないとの見方を示す。

また、米商品先物取引委員会(CFTC)が発表した投機筋の日経平均先物(2月11日までの週)のポジションをみると、ドル建ては2月以降に拡大している。円建ても前週はやや減ったが、まだ高水準だ。短期筋のすべてが日本売りに転じたというわけではないようだ。

ただ、「アベノミクスに対する海外勢の関心は低下している」(外資系証券エコノミスト)との指摘も多く、日本株に昨年まで吹いていた強い「追い風」が消えたことは否めない。成長戦略などが実現するまで円安・株高効果に多くを依存するアベノミクスは、投資家の期待をつなぎとめておくことが不可欠だ。

インベストラスト代表取締役の福永博之氏は「海外投資家が注目している法人税減税で具体的な日程などを安倍晋三首相が打ち出すことができれば、興味を取り戻すことができるかもしれない。また日銀が現時点で追加緩和すればサプライズとなり、インパクトも大きくなるだろう」との見方を示している。

(伊賀大記 編集:宮崎大)

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