ゼロ戦争勃発!サッポロはナゼ独自路線を狙うのか?《それゆけ!カナモリさん》

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 サッポロ定番の「ヱビス」はサントリーの「ザ・プレミアム・モルツ」と真っ向勝負の最中だ。一方、ビール系の中では唯一の成長カテゴリーである第3のビールでも苦戦が続いている。「ビールと紛う味の良さ」と評判の「麦とホップ」の快走を期待したいところだが、イオンとセブン&アイ系列の店頭には、サントリー製のPB商品が棚を占拠しはじめた。ディスカウント店では、韓国製の第3のビールの侵攻が始まっている。ここでも予断を許さない。

 そして、大手4社そろい踏みとなったノンアルコールビール。ノンアルコールでも同じビール系飲料の棚に入れられる。サッポロは、競合と同じ土俵で勝負をするのではなく、あえて製品特性とターゲット設定をずらして、「独自の生存領域確保」を狙う「ニッチャー戦略」をとっているのではないだろうか。

 サッポロとて3位返り咲きを狙っているはずである。しかし、全てのカテゴリーで真っ向からチャレンジして、万が一にも総崩れになることは避けたい。そのためにターゲットを絞り込み、囲い込み、一定の販売数を確保する。そんな思惑が、スーパークリアの展開から伝わってくるのである。

 ノンアルコールビール戦争(ゼロ戦争とも言うらしい)の火ぶたは切って落とされた。まずは味わってみよう(仕事中でも飲める!?)。PRやCMでのメッセージ、パッケージ、すべてに目を凝らしてみよう。そこから、各社の意図と戦略が透けて見えてくるはずだ。

《プロフィール》
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
◆この記事は、「GLOBIS.JP」に2009年10月2日に掲載された記事を、東洋経済オンラインの読者向けに再構成したものです。
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