なぜ安倍政権は財政政策を発動しないのか 日本だけが他の主要国の政策と逆行している

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こうした世界経済の情勢を踏まえると、2020年にかけて各国政府が、実効性を伴う経済安定化政策を打ち出せるかどうかが重要になる。アメリカでは、2019年早々に米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げ姿勢に転じ、また政府の建設投資が大きく増えるなど、財政政策の押し上げが顕在化している。

FRBは利下げを続ける見通しで、さらに10月11日に財務省短期証券を当面月600億ドルのペースで購入する政策を発表した。この対応は、短期金融市場での資金逼迫を招いた自らの失策を是正する意味合いが大きいが、FRBのバランスシートが大きく拡大するため、金融緩和を強める効果があると筆者はみている。

今後、筆者は、アメリカ経済では、非製造業や労働市場などにも減速感がが広がると予想する。ただ、上記に挙げた政策対応の下支えによって、アメリカ経済はぎりぎりのところで景気後退を回避すると予想する。2020年の大統領選挙の情勢は流動的だが、現職のトランプ大統領が成長率を高める財政政策に前向きであることは重要である。

2020年にかけての各国の株式市場のパフォーマンスには、経済成長押し上げに対する政治、政策当局の姿勢が大きく影響すると見込む。今後6カ月程度は、アメリカ株市場の下振れリスクは大きいと予想するが、同国株のパフォーマンスは相対的には他国を上回るだろう。

日本は安定化政策の観点で最も期待できない国

一方、経済安定化政策の観点で、最も期待できないのは日本だと考える。2018年夏場から日本銀行は引き締めを模索し始めた。その直後から日本経済の景気後退が始まっていたとみられる中で、金融政策の現状維持が続いている。10月末の金融政策決定会合でも「政策据え置き」を予想する。

さらに、2019年10月からの消費増税により財政政策は緊縮方向に転じた。金融財政政策がいずれも緊縮的に作用しているため、日本経済の先行きは、海外経済次第(より正確に言えばトランプ大統領次第)という大変心許ない状況に至っていると判断される。

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