「恋愛経験ほぼナシ」45歳男性が結婚できたワケ 何事も思考優先の"変人"を変えたのは…

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「それまでは1人ベースで考えていました。他人と話が合わなかったとしても、『どうせ他人同士なんだから』と割り切ればいいので、その先はありません。でも、今では毎日の食事内容にも2人の同意が必要です。恵美子さんと一緒にいると、他人との距離感の自由自在さを学習することができます。いまは新しい流れに身を任せているところです」

先日は人生初めての海外旅行も体験した。行き先は、恵美子さんが好きなベトナムだ。

「ベトナムという国がどんなところか知らないので怖いなという気持ちは一瞬よぎりましたが、恵美子さんが『私がいるから大丈夫よ』と言ってくれました」

隆之さんのコメントには結婚生活のすばらしさが詰まっていると筆者は思う。結婚すると自由が減るという言説をときどき目にするが、相手次第では人生はより豊かにより幅広いものになる。1人きりでは決して考えられなかった体験をして、自分の意外な一面に気がついたりするからだ。お互いの足りないところを補い合い、支え合いながら生活を高めていくこともできる。

熱心に「結婚」を探求する隆之さん

結婚後も隆之さんは結婚に関する独自研究を続けている。最近は、セックスレスやモラハラについて読み、恵美子さんから自分がモラハラを受ける危険性はないかを検討しているらしい。逆に関しては「まったく心配ない」と恵美子さんは言い切る。

「隆之さんは人の邪魔をすることはありません。私がやっていることへの反応は、一番そっけないときでも放置で、たいていは寄り添うか応援をしてくれます。彼のせいで私がやりたいことやスケジュールを変更したことはありません」

かなりの褒め言葉だと思うが、隆之さんは相変わらず眉間にしわを寄せている。なぜ自分はモラハラをしないのかを考えているのだ。

「何かが起きたとき、『お前が悪い』と相手に思うことは100%ありません。そもそも他人に腹を立てるという意味が私にはよくわからないのです。自分が悪いとも思いません。失敗の原因を探すときは、誰が悪いのかではなく、何が違ったのかを探求するほうが生産性があると思うのです」

隆之さんの話が終わるのを見計らっていたように、恵美子さんは「せっかくだから少し施術しましょうか」と筆者に提案してくれた。肩がこっているのを見破られたのかもしれない。何事も頭で考える隆之さんと、感覚に従って行動する恵美子さん。いい組み合わせだな、と素直に思えた。

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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