京急「快特」が衝突脱線、踏切は安全だったか 数は減ったが、鉄道側の対策には限界も

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国土交通省の「踏切安全通行カルテ」によると、事故が起きた神奈川新町第1踏切は4本の線路と横浜市道が交差し、長さは19.4m。ピーク時の遮断時間は48分で「開かずの踏切」に区分されている。同カルテの作成時点では、過去5年間の事故発生件数は0件だ。

京急の踏切数は、2019年度の安全報告書によると全線87kmに86カ所で、関東の大手私鉄の中でも少ない。とくに都内の本線は立体交差化が進み、品川付近に残るのみだ。ただ、今回事故が起きた京急川崎―横浜間は踏切が比較的多い区間で、列車のスピードも速い。

安全対策には限界も

踏切の安全対策は長年の課題だ。国は1961年に「踏切道改良促進法」を制定し、踏切の改良や安全対策を進めてきた。1960年に全国で7万カ所以上あった踏切は、2017年度には3万3250カ所まで減少。踏切事故の件数も同期間に年間約5500件から248件まで減ったが、現在も1日に1件近く発生している。

踏切は神奈川新町駅のホーム近くで、画面奥が横浜方面。脱線した電車の後尾はホームにかかった状態だった(記者撮影)

鉄道各社も安全対策を進めている。京急はすべての踏切に警報機と遮断機を整備済みで、車の立ち往生などを検知する装置も63カ所に設置。車が通行する踏切には事故の際に列車の脱線を防ぐガードレールを設けている。また、衝突や脱線の際に先頭が重い方が安全性が高いとして、電車の先頭車両を重量のあるモーター付きとしているのも特徴だ。

だが、踏切で車や人が動けなくなった場合、列車が近づいていれば間に合わない。鉄道側の対策には限界があるのも事実だ。

京急は「乗客にけが人が出るような事故はこのところ起きていなかった」と説明する。各社は、鉄道イベントで「非常ボタン」を押す体験ができるコーナーを設けるなど、踏切での安全意識向上を訴えている。踏切の数を減らすことが簡単には進まない中、こうした地道な取り組みを続けていくしかできないのが現状だ。

橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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