日本経済、回復のシナリオに暗雲も

新興国起点の日本株下落で、個人や企業の心理悪化

2月4日、大幅続落した日経平均は、保有株の下落で投資家の懐が痛むだけでなく、もっと大きな範囲でマイナスの効果を波及させそうだ。写真は東京証券取引所で1月撮影(2014年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 4日 ロイター] -4日に大幅続落した日経平均<.N225>は、保有株の下落で投資家の懐が痛むだけでなく、もっと大きな範囲でマイナスの効果を波及させそうだ。

株価下落で個人と企業のマインドが悪化し、これからの消費や投資にブレーキがかかる可能性が浮上。加えて、株価下落の背景にある新興国経済の不安が長期化したり、一段と広がりを見せるようになれば、消費増税後にけん引役と期待される輸出の伸び悩みが予想され、日本経済回復のシナリオに暗雲が垂れ込めることになる。7─9月の成長率が思うように高まらない不安が強まれば、日銀に対する早期の追加緩和を求める声が、市場だけでなく政府・与党内からも表面化する可能性がある。

<新興国動揺が世界的に連鎖する不安>

新興国通貨や株価の下落が鎮静化するのか、それとも広範囲に広がるのか──。各国の政策担当者は、新興国政府や中銀の対応とその後の市場反応を慎重に見極めようとしている。逆に言えば、はっきりとした見通しが立てづらいほど不透明感が高まっているとも言える。

米当局関係者や金融市場関係者へのヒヤリングを終えて帰国した野村総研・金融ITイノベーション部長の井上哲也氏は、米金融機関が問題となっている新興国への融資に深い入りしている兆候は今のところうかがえないものの、金融システム不安が発生する可能性に米当局関係者も「神経をとがらせている」と指摘する。

米経済自体は、従来から指摘されてきた「財政」「家計の調整」「失業率」「中小企業」の4つの問題がどれも著しく改善しつつある。

財政をめぐる議会と大統領の対立は昨年と比べ和らぎ、家計の負債削減も進ちょくが目立ってきた。個人消費は強く、失業率は予想を上回るスピードで低下し、ここへきて中小企業の回復も鮮明となっている。米連邦準備理事会(FRB)もこうした状況に基づき、金融緩和の縮小を機械的に進めることにしたとみられる。

ただ、新興国の動揺が米金融機関に影響を及ぼすようなショックがあれば、粛々と進めようとしている緩和縮小も、時限的にストップする選択肢もありえると井上氏は見ている。

<増税後の景気、外需の回復と株価がカギに>

他方で日本の政策当局の間では、タイやインドネシア、インドなど日本経済にとって影響の大きいアジア、東南アジア諸国連合(ASEAN)の動揺が続けば、4月以降の消費増税引き上げ後に、内需減速を補うことが期待されている外需の回復に水を差しかねないとの不安が高まっている。

アジア経済の停滞は、円安で推移してきたこの1年間、実質輸出がほとんど伸びなかったことに表れている。昨年12月の実質輸出の水準は、4月ごろの水準とほとんど同じだ。進出企業の間では、円安により現地での価格競争力は向上し、拾えなかった受注も取れるようにはなったものの、肝心の需要が増えず、結果として輸出数量も増えにくくなっている、との見方が出ている。

このまま新興国の混乱が続いたり、外需が回復しなければ、消費増税後に緩やかな成長軌道に戻るシナリオが危うくなる──。政策当局関係者も不安げな面持ちを隠せない。

というのも、増税による実質所得の落ち込みにより、年間を通した個人消費が、2013年には及ばいないためだ。政府の5兆円の経済対策についても、即効性を期待されている公共工事が人手不足や資材価格高騰で、全体として工事の進ちょく率が高まらない可能性も出てきた。

このため、もし外需回復が日本経済を後押ししなければ「経済対策は打ったものの7─9月に景気がどの程度回復するのか、不安も残る」(別の政策当局者)と懸念の声が漏れている。

民間エコノミストの間でも、株価下落が長期化すれば消費増税後の回復シナリオが崩壊しかねないとの不安感が広がっている。

というのも、民間調査機関40社の見通しを集計したフォーキャスト調査では、7─9月に2%近い成長率を見込んでいる先が多い。4─6月に落ち込んだ後の反動増に加え、春闘での賃金アップや株価上昇を見込んでいるためだ。

<不安増幅なら、早期追加緩和の可能性>

2014年の景気が消費増税を乗り越えて、成長軌道に戻れるか否かは「円安・株高の持続性や輸出のけん引力の回復次第」(三菱総合研究所・チーフエコノミスト・武田洋子氏)という見通しの中で、4日の東京市場ではこの2つの要素への不安が膨らんだ。

これまでのところ、足元の日本経済は、駆け込み需要や冬のボーナス増額もあいまって、消費や設備投資、生産など幅広い分野の経済指標が非常に強い動きを示している。

このため、日銀による追加緩和や経済対策の積み増しなどの必要性は高まっていない。特に4月の増税の影響を見極める前に何らかの政策措置が取られるとの一部の観測については、政策当局も、理由が見つからないとしてきた。

しかし、「もし追加緩和が必要になるとすれば、今般の新興国不安や株価下落が一つの理由になるかもしれない」(井上氏)との声が、民間のみならず、ここへきて政策当局内部からも出始めいている。

日本経済を取り巻く世界経済の下振れが起これば、14年度のシナリオが崩れかねないためだ。IMFが今年1月に世界経済の成長率予想を上方修正したばかりだというのに、早くも懸念材料が出てきた。

新興国への不安感は、ゴールが見えないことで増幅されており、このまま長期化すれば、4月から消費税を上げようとする日本経済の「横腹」を直撃するという最悪コースの可能性もある。

新興国市場の動揺が「一過性」なのか、それとも「泥沼化」するのか。直近のマーケットの情勢は、今年の日本経済の先行きを大きく左右することになりそうだ。

(中川泉 編集:田巻一彦)

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