日韓鉄鋼バトル、5期ぶりに利益額が逆転 急回復の新日鉄住金、減速続く韓国ポスコ

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浦項にあるポスコの本社

新日鉄住金の粗鋼生産量も4830万トンと、前期(統合前の2社を単純合算)に比べ5%程度増えることで、490億円の増産効果が見込まれる。ほかにも、ステンレス事業や国内の2次加工会社の業況が改善し、収益を330億円押し上げる。

コスト面の改善も顕著だ。原料価格が下がったことで1000億円、前期に計上した在庫評価損が消えることで820億円、利益が底上げされる。輸出価格の低迷や製品構成の悪化といったコストアップ要因が700億円ほどあったが、これを押し返した格好だ。さらに、経営統合効果300億円を含め、低品位原料の使用を拡大させたことで合計1300億円のコスト削減が見込まれる。

対照的に、ポスコはウォン高や輸出の不振に苦しんでいる。中国の鉄鋼メーカーが増産した鋼材が韓国にも流入し、同国内の販売価格が低迷。さらに、韓国経済の減速によって需要が減少したことも打撃となった。

このまま引き離せるか

5期ぶりとなる利益の逆転劇は、新日鉄住金の業績改善というより、ポスコの減速が続いている影響のほうが大きい。新日鉄住金の宗岡正二会長はかつて東洋経済の取材に対し、「ポスコが東アジアマーケットで競争力を持っているのは、ウォン安のおかげ。これは必ず反動が来る」と答えていた。まさにウォン高がポスコの収益を直撃した格好だ。

ただし、新日鉄住金も盤石とは言いがたい。景況感の好転や経営統合によるコスト削減で収益は改善してきたものの、証券市場では「経営統合によるコスト削減の先に成長戦略が見えない」との声も根強い。はたして、新日鉄住金は新たな成長戦略を打ち出し、このままポスコを突き放すことができるか。

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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