「地頭がいい人」とそうでもない人の決定的な差 知識の世界で重要な「答え」よりも意味を持つ

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地頭力とは、これら6つの要素を組み合わせることによって、「結論から」「全体から」「単純に」考える力だといえるのだそうだ。

ところで気になるのは「そもそも地頭は鍛えられるものなのか?」という問題だが、細谷氏はこの問いに対して「地頭力の定義による」と答えている。この質問をする人は、「地頭力は生まれつき持った能力である」という定義を前提としているように見えるというのだ。

「地」頭力という言葉の印象から、そのように捉える人がいるのも理解できる。しかし、本書における定義はここまでに書いてきたとおりだ。知識力と比較して「知識を組み合わせて新しいアウトプットを生み出すための考える力」ということであり、そういう意味では「地頭力を鍛える」ことは十分に可能だということ。

後天的なものがゼロである能力はほとんどない

一般的に用いられる「○○力」は、それが知的能力であれ身体的能力であれ、「先天的なもの」もあれば「後天的なもの」もあり、その比率はさまざま。とはいえ後天的なものがゼロである能力はほとんどないはずなので、そういう意味では「地頭力を鍛える」ことも十分に可能だというわけである。

『入門 『地頭力を鍛える』 32のキーワードで学ぶ思考法』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

細谷氏はもう10年以上、「人間の知的能力に対する問題提起」という課題に取り組んできた。その過程においては2007年の『地頭力を鍛える――問題解決に活かす「フェルミ推定」』(東洋経済新報社)をはじめとする著作によってそれを表現し、人間の知的能力がどうあるべきかという問いに対する考え方を示している。

そして、それら前著を読む前、あるいは同時に読んでもらいたいという思いを抱いて書かれたという本書は、思考(法)を学ぶための入門書なのだという。これまで明らかにしてきたさまざまなキーワードについて、簡潔にわかりやすくまとめているのである。

いってみれば、「考える」に至るまでのベーシックな知識を身に付けるための1冊なのだ。

印南 敦史 作家、書評家

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いんなみ あつし / Atsushi Innami

1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。「ライフハッカー[日本版]」「ニューズウィーク日本版」「WEBRONZA」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」など紙媒体にも寄稿。『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)など著作多数。

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