相鉄「都心直通」で武蔵小杉の混雑は増すのか? 湘南新宿ラインなどJR線にはどんな影響が

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武蔵小杉駅ホームの混雑にどのような影響を及ぼすかも、相鉄・JR直通列車の運転開始で気がかりな点の1つだ。

同駅の横須賀線ホームは周辺の急速な発展や乗り換え客の増加によって混雑が常態化しており、新宿方面行きの相鉄直通列車から東京方面に向かう横須賀線への乗り換えが発生すれば、さらに混雑が悪化するのではないかとの声がある。

相鉄によると、同線の通勤客の約7割は東京方面が目的地で、どちらかといえば新宿などの山手線西側エリアより、東京・新橋など都心部への利用者が多いという。直通列車を利用し、横須賀線などに乗り換えて東京方面へ向かう需要は多そうだ。

武蔵小杉駅の地元である川崎市は「運行概要の発表以前から、もし(相鉄・JR直通列車が)通るとすれば混雑の懸念があったので、JRには混雑が想定されるのであれば対策を取ってほしいとお願いしていた」(まちづくり局交通政策室)と話す。

具体的なダイヤはこれから

JR東日本横浜支社は7月25日、同駅横須賀線ホームに音声で注意を呼びかける「転落防止注意喚起センサー」と、ライン状に点滅する光によって列車到着時に注意を促す「スレッドライン」を整備すると発表した。

同支社によるとこれは「特にそういった(相鉄直通に合わせた)ものではなく、安全性向上に向けた取り組みの一環」という。だが、直通運転が始まれば、現在は11両・15両の列車が停車するホームに10両編成の列車が新たに加わることになるだけに、安全対策や案内の充実が望まれる。

羽沢横浜国大駅の案内板。上り方面の2番線には行先が入っていない=2019年3月(記者撮影)

首都圏の交通網に新たなルートを開く相鉄・JR直通線。相鉄は「二俣川―新宿44分」をアピールし、東急田園都市線のたまプラーザ(新宿までラッシュ時45分)や小田急線の相模大野(同41分)などと変わらない所要時間で新宿・渋谷方面へ通勤できるとして「選ばれる沿線」になることを目指す。

ただ、実際に便利なルートになるかは運行ダイヤ次第。列車本数や運行区間は公表されたものの、具体的な時刻などはこれからだ。また、遅延や混雑が目立つことになれば、せっかくの直通運転もネガティブなイメージを持たれかねない。ネイビーブルーの相鉄車両が乗り入れ先の都心部で親しまれ、狙いどおり路線のイメージや知名度のアップにつながるかどうかは、安定運行や混雑対策もカギとなるだろう。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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