ボルボが「交通死亡事故ゼロ」にこだわる理由 2021年モデルからは180km/hまでの速度制限

拡大
縮小

大きなマイルストーンとなったのが、2009年に日本に初導入された“City Safety(シティセーフティ)”だ。衝突回避のために車両を完全停止まで導く衝突回避・被害軽減ブレーキを、日本で初めて設定したのは実はボルボである。

これは、国内メーカーが技術的には実現できていながら、完全停止の実現には二の足を踏む状況の中で、海外での事故統計データなどをもとに地道に国交省と折衝を繰り返した結果。現在の衝突回避・被害軽減ブレーキの普及ぶりを見るに、これが英断だったことは改めて繰り返すまでもないだろう。

目標達成は厳しくなってきたが…

最新のボルボ車が標準装備している先進安全・運転支援機能の「IntelliSafe (インテリセーフ)」は、衝突回避・被害軽減ブレーキシステム付きシティセーフティをはじめ、ステアリングアシスト付きBLIS(後車衝突回避支援機能付きブラインドスポット・インフォメーション・システム)、衝突回避・被害軽減ブレーキ機能付きCTA (クロス・トラフィック・アラート)、被追突時警告機能(静止時ブレーキ維持機能付き)などのさまざまな機能が統合されたものである。

これによって、いわば車体の周囲360°の監視と、衝突回避・被害低減を希求しているのだ。それでも、残念ながら2020年まであと1年となった現在の状況を見るに、「Vision 2020」の目標達成は極めて難しそうだと言わなければならない。

例えば日本の事例を見れば、交通事故件数は減っているし、それによる負傷者数、死者数も減少傾向にある。いわゆる先進国はどこもほぼ同様の状況にあるが、依然として事故は完全にゼロではない。新しいボルボ車に搭乗中の事故による死亡者、重傷者も、やはりゼロまでは到達していないのが現状である。

しかしボルボは、目標を変えることはしない。ボルボにとって安全は永遠の課題であり、今後もその哲学をブレさせることなく、それを追求していくことになる。

次ページ速度制限を導入する理由は?
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT