孤独死した30代女性の部屋に見た痛ましい現実 男8割、女2割、現役世代も多い切実な問題だ

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ある特殊清掃業者はこの現状について、「孤独死した人の部屋は、ゴミ屋敷だったり、まるで、そのお部屋だけが世間と隔絶されたりしたかのように、別世界になっている。周囲では、日常生活が営まれているのに、その人だけ存在しないかのような扱い。

でも、本人も生前は精神的にも肉体的にもおそらく、苦しんでいたという痕跡が見てとれるケースがほとんど。孤独死現場に携わるたびに、胸が張り裂けそうになる。孤独死対策においては、高齢者ではなく、現役世代こそが、最も目を向けるべき層だ」とため息を吐いた。

『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』(毎日新聞出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

私の調査によると、わが国では1000万人が孤立状態にあり、団塊ジュニア、ゆとり世代が、実は最も孤立しているという世代でもある。

今後孤独死は、東京・練馬で起こった元農林水産事務次官の父親による長男刺殺事件で、注目を集めることになった「8050問題」(中高年の引きこもりを高齢の親が養っている状態)や、孤独死予備軍ともいえるロスジェネ世代の孤立の問題とも深くリンクしてくるだろう。

いまだ手つかずのままになっている現役世代の孤独死――。国などの行政機関がその実態把握に乗り出すのはもちろんのこと、社会の構成員である私たち、1人ひとりが、もっと目を向けていくことを切に願う。

菅野 久美子 ノンフィクション作家

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かんの・くみこ / Kumiko Kanno

1982年、宮崎県生まれ。大阪芸術大学芸術学部映像学科卒。出版社で編集者を経て、2005年よりフリーライターに。単著に『大島てるが案内人 事故物件めぐりをしてきました』(彩図社)、『孤独死大国』(双葉社)、『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』(毎日新聞出版)『家族遺棄社会 孤立、無縁、放置の果てに。』(KADOKAWA)など。

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