ダイドー「無人コンビニ」との提携に透ける焦り ベンチャー企業と組み自販機事業をテコ入れ

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600の無人コンビニは企業のオフィスを中心に75カ所で展開する(写真:600)

600にとっても、今回の提携は魅力的だ。一般的な自販機は、無料で設置する代わりに飲料の売り上げで採算を確保する。他方で、600はメーカーではないため、物販だけでは採算が取れない。そのため設置料金を月額3万〜5万円徴収しているのだが、600の久保渓代表は「この設置代金が、展開拡大の際のネックになっている」と語る。

ダイドーグループが自社の自販機と600の自販機を併設した場合、月額の設置料金をダイドーグループが負担する。ダイドーにとっては、この負担があっても、大手との競争によって不利な条件で落札するより1台当たりの収益性が圧倒的に高いという。

データ活用能力を高める

ダイドーグループは今回の提携で、データ活用能力を高める狙いもある。実は、600の久保代表は、LINEの決済サービス「LINE Pay」を立ち上げたメンバーだ。無人コンビニはクレジットカードで決済をするため、購買者情報に、いつ、何を買ったかが紐づけられる。そうした購買情報に基づいて、自販機の品ぞろえを変えていくこともできる。

ダイドーグループも自販機のオンライン化を進めて購買情報を集めてはいるが、分析するノウハウには乏しい。600の強みであるデータ活用能力を既存の自販機にも展開することで、屋内での設置だけではなく既存の自販機1台当たりの売上高の底上げを図りたい考えもある。

自販機業界にもIT化の波は着実に押し寄せており、生き残るために対応は必須。下位メーカーとして、どのように生き残っていくのか。ダイドーにとって今回の提携はその試金石になる。

石阪 友貴 東洋経済 記者

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いしざか ともき / Tomoki Ishizaka

早稲田大学政治経済学部卒。2017年に東洋経済新報社入社。食品・飲料業界を担当しジャパニーズウイスキー、加熱式たばこなどを取材。2019年から製薬業界をカバーし「コロナ医療」「製薬大リストラ」「医療テックベンチャー」などの特集を担当。現在は半導体業界を取材中。バイクとボートレース 、深夜ラジオが好き。

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