メディアの民主化が加速する |

メディアの民主化が<br />加速する

メディアの民主化が
加速する

堀義人×梅田優祐 対談

國貞 文隆(ジャーナリスト)
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グロービスの学長職の傍ら、経済同友会幹事、復興支援プロジェクトKIBOW代表理事等を務め、ダボス会議にも毎年参加と多忙を極める堀義人氏。そんな堀氏の経済情報の収集方法は、ソーシャルメディアの進歩に伴い大きく変わったようだ。読者とより直接につながることを通じて、今後はメディアの民主化が進むと予測する堀氏。梅田優祐氏との対談の中で、ソーシャル時代の経済メディアに求められるものが明らかになっていった。


堀義人
グロービス経営大学院 学長、グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー。京都大学工学部卒、ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。住友商事株式会社を経て、1992年株式会社グロービス設立。2006年4月、グロービス経営大学院を開学。

紙メディアがニュースを
決める時代は終わった

梅田 堀さんは普段、どういうかたちで経済情報を収集されているのでしょうか。

 私の場合は、過去と現在を分けて語ったほうがいいでしょうね。過去においては、日本経済新聞、日経ビジネス、週刊東洋経済、ウォールストリートジャーナル、フィナンシャルタイムズ、英エコノミスト、フォーチュン、フォーブスと新聞・雑誌を紙ベースでひたすら大量に読み続けてきました。

それがソーシャルメディアの時代に移った現在では読むものも変わってきて、そのほとんどをタブレットで読むようになりました。今最初に読むものは、NewsPicks。それからスマートニュース、日経電子版の順番で読んでいます。

ソーシャルメディアでは、NewsPicksのように1つのメディアでバランスよく多数のキュレータがピックアップしたニュースが並んでおり、キュレータのコメントを見るだけでなく、自分がコメントを書いて発信者になることができるようになりました。かつての紙メディアのように少数の編集デスクがニュースの重要性を決める世界とは、まるで別世界です。

その意味で、最近自分で変わったと思うことは、ソーシャルで人を軸にしてニュースを得ることが増えてきたことです。「この人はどういう見方をするのか」「どんなものに関心があるのか」。そこから様々な情報に繋がるようになりました。

梅田 これからのメディアは、そうした変化をもとに根本的に変わっていくのでしょうか。

 今後はメディアが民主化されていくでしょう。ツイッターのフォロワー数などのアルゴリズムによってニュースの重要度が決まっていくというのが、本来のメディアのあるべき姿だと思います。勝手に少数の人間がニュースの順番を決めるのではなく、ユーザーが決めていく時代に入ってきている。しかも、キュレータという人の要素を入れるという面白味もありますからね。


トップたちにとって
ソーシャルメディアでの
コミュニケーションが重要になる

梅田 とりわけ経済分野では人の要素が重要だと思っています。専門家の方なら知識がありますから、より専門的なコメントが入ってくる。しかも、ソーシャルメディアなら専門家同士の異なる主張を一覧で見ることもできます。堀さん自身もよくコメントされていますが、いつ情報を読んで、発信されているのでしょうか。

 だいたい朝が多いですね。タブレットを使って、まずメールを見る。それからツイッター、フェイスブックといったコミュニケーション系を処理します。続いてNewsPicksなどのメディア系を見る。コメントするのは1日2~3回。メールなどのコミュニケーション系はもっと多いですね。

なぜ頻繁にコメントするのかといえば、トップの仕事というのは、最終的にはコミュニケーションになるからです。人を動かすには、必ずコミュニケーションをとらなければならない。コミュニケーションこそ、トップにとって最も重要な仕事なのです。

私はソーシャル以外にも、ブログも書けば、コラムや本も書く。スピーチをしたり、取材も受ける。それがだんだんと仕事になってくる。そこを通して多くの人を巻き込んでいく。企業にとっては、それが株主や社員とのコミュニケーションになり、顧客へのメッセージにも繋がっていく。これからの時代は、経営トップによる情報のインプット、アウトプットの比重がどんどん大きくなっていくと思います。

しかも、コミュニケーションの成否は発信者側ではなく、受信者側が決めるものです。だからこそ、受信者側にとって面白いものかどうかが重要になってきます。ユーザーは面白い人のコメントしかフォローしませんから。面白いとは何かと言えば、ユニークな視点や主張なんですね。しかもソーシャルメディアは、ユーザーに常に見られている。その意味でもコミュニケーションという要素はトップにとって、もっと重要になってくると思います。


梅田優祐
ユーザベース代表取締役。1981年、アメリカ合衆国ミシガン州生まれ。2004年に横浜国立大学経営学部を卒業後、コーポレイトディレクション、UBS証券を経て、2008年にユーザベースを設立。

原発の必要性を唱え続けて
私が肌で感じたこと

梅田 堀さんはここ数年、ソーシャルで発信される頻度が高まったように思うのですが、そこにはどんなきっかけがあったのでしょうか。

 孫(正義ソフトバンク社長)さんと原発の議論をしてからでしょうね。反原発を叫ぶ方たちが多い中で、私は原発の必要性を唱えていましたから、相当叩かれました。主張を続けることで、自社の顧客が離れていくのではないかという危機感もありました。そのため自校の学生、社員、株主の方々とも全員集会を開いたりもしました。

でも、そこからわかったことは、普通なら自分の意見を言い続けることがマイナスの影響を生むと思うかもしれませんが、結果として、私は敵をつくるよりも多くの味方を得ることになったのです。

炎上などの激しい誹謗中傷の嵐を経てしまうと、後はどうってことはないのです。そもそも解決が難しい政治的な問題は大抵タブーの対象であり、現在の日本でも原発、医療制度、社会保障など大きな問題は解決されないままとなっています。

しかし、そうした問題について誰かが発言していかないと解決には向かいません。今はタブー視されるような問題でもツイッターやフェイスブックという武器を使って個人でも積極的に発言できる世の中になりました。誰もがアプローチできるのです。

梅田 個人で発信できるプラットフォームが増えてきましたし、今では個人でもメディアになりうる可能性があるわけですからね。

 今まではメディアに載せてもらわなければ伝わらなかったものが、ソーシャルによって自分たちで発信できるようになったのですから、それを使わない手はない。積極的に言い続けていれば、必ず賛同者は増えていきます。私自身、世論はこうやって動くんだと肌で感じましたから。自分が正しいと思うことを多少ビビりながらでも言い続けることが大事なのです。多くのユーザーはその姿勢を見ているのです。


ソーシャルメディアから
言論のスターが生まれる

梅田 個人が情報発信することとニュースの情報が組み合わさって、1つの見解が世の中に出ていく。それが今後のあるべき姿だと思うのです。NewsPicksも専門家の方々が何を言っているのかということに重きを置いたメディアにしていきたいと思っています。そうした中で、堀さんがもっとメディアにこうしてほしいといった要望はありますか。

 私は既存の新聞・雑誌について、強い不満を持っているわけではありません。むしろ国内外を問わず、メディアを束ねたメディアが新たに出てきてほしいと期待しています。

特に英米系メディアの論調は読むと面白い。今でも英エコノミストだけは紙で読んでいます。英米系でも英国系のほうがグローバルだし、政府も平気で批判するので好きです。フィナンシャルタイムズだって、すべてには賛成しないけれど面白い。

なぜ海外の論調が面白いのかといえば、日本のメディアと違って主張があるからです。よく言われることですが、日本のメディアには主語がありません。「こういうふうに思われる」「これは今後問題視されるであろう」と自分が批判されないように持っていく傾向が強い。そこには深掘りした洞察や突っ込んだ感じがないのです。

私が読みたいのは表面的には大きく騒がれているが、「そうは言っても実はこうなんだ」という見方です。その見方がユニークだからこそ読みたくなるわけです。ところが、日本のメディアは流れてきた事象を「これが問題になります」とオブザベーションするだけで、終わってしまっているのです。

梅田 日本のメディアは署名記事が少ないうえ、誰が何を言っているのかわかりにくいですね。

 日本でもソーシャルでは、そうしたユニークな論調が出始めてはいますが、いかんせん海外に比べれば、面白い発信者はまだ少ないでしょうね。国内では私が関心を寄せる人は数人ほどしかいません。だからこそ、これからどんどん新しい言論のスターが出てきてほしいですね。その余地はたくさんありますから。


メディアに求められるものは
クリティカルシンキングに基づいた
オリジナルな視点

梅田 ただ、発信できる人は、それだけのインプットがあることが大前提になります。経験も必要になるでしょう。その意味で経営者の方々がもっと発信すべきでしょうね。

 そもそも経営者は、経営以外のことに自分の時間を使うのはもったいないと考える方々が比較的多いと思います。でも、これからの経営者は、自分たちが社会のリーダーの1人でもあるという認識をもっと持たなければならないと考えています。

もちろんリーダーになるには、それ相応の見識を持つことが必要になってきます。ただ、見識を磨くための勉強は昔のように時間はそれほどかかりません。私もかつては自分の考えをまとめるために10冊くらいの本をまず買っていましたが、今ならネットで検索して多くの人の意見を聞いて、そこからデータの調査をして、専門家とも意見交換していけば、自分の考え方は構築できるのです。

梅田 見識を深めるために重要なこととは何でしょうか。

 例えば、私が毎年参加しているダボス会議は、リーダーの見識の品評会のようなところなんです。面白い人の話はたいていオリジナルな視点を持っています。自分のオリジナルなロジックで語れるということは、自分の言葉を持っているということです。

私の場合も、いつも自分の正しいと思うファクトを認識して、それをもとに考え方を構築してきました。ベンチャー企業の経営もそうです。

ただ、政治的な問題はなかなか難しい。でも、勉強して次第に自分の頭の中に各問題のマッピングができてくると、今度は何が一番重要かというプライオリティがわかってきます。問題をプライオリティ化できれば、それぞれの関連性を見ながら、バランス感覚を持って判断できるようになるのです。

梅田 魅力的でオリジナルな視点を持つにはどうすればいいのでしょうか。

 人の言うことは正しいという前提をひっくり返すことですね。自分の脳みそを信じて、すべての常識をまず疑ってみる。ベンチャー起業家とは基本的にそういう人たちなのです。だから面白いことができる。重要なのは、クリティカルシンキングの力、自分でユニークに考える発想、それを言語化していく力でしょうね。

つまり、すべてはクリティカルシンキングということなのです。考え方とはロジックを積み重ねていくことですから。さらにアウトプットするときは、言葉を組み合わせるセンスや文章の面白味も必要になってくる。ロジックだけでは面白くない。経済メディアでも、そんなオリジナルな視点を持った記事やコメントをもっと読んでみたいですね。

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