「不妊治療と仕事」両立に苦悩した女性の本音 予測できない休み、両立する人の厳しい現実

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「次の病院は1日に何千人も通院しているようなクリニックで、非常にシステマチック。でも、そのときはもう20分の丁寧な診察よりも、自分の体に負担をかけない治療方法で、結果が欲しかったんです」

新しいクリニックは通勤経路からは外れていたうえ、診察は主に午前中で終了。指定されたスケジュールで通うには、通院の条件は格段に悪くなった。

「でも朝7時や7時半に行って並びさえすれば、始業時間の10時に間に合う。しかもそこのクリニックは、『自然で、体に優しい』をモットーにしていたから、注射も少なく通院回数も減りました」

不妊治療助成は対象外

体外受精から対象になる特定不妊治療の助成の所得制限は、水野さんの住む自治体では、夫婦合算で730万円。都内でバリバリ共働きをしている夫婦の多くは、この対象条件から漏れてしまう。水野さん夫婦もご多分にもれず対象にはならなかった。

「治療を始めた年齢が30歳と早めだったこともあり、治療をやめる年齢も、金額も上限を決めていませんでした。夫が住宅ローン返済をしてくれていたので、治療費は全額私の負担。ボーナスを全額突っ込みました。数百万単位でお金は使いましたが、実はいくら使ったかちゃんと把握していないんです。注射1本1万円、卵を優しく育てる薬は1錠1000円(笑)、原因不明の不妊だったので鍼灸にも通いました。当時会社の業績がよかったことが救いです」

そして、水野さんのヨミが当たったかのように、転院後最初の体外受精で着床。赤ちゃんの心臓が動いているのが見えるいわゆる心拍確認を経て、クリニックを無事卒業。

しかし、喜びにあふれるはず産科での検診で、非情にも赤ちゃんの心臓が止まっていた。

「それまで1度も夫婦で病院に行ったことがなかったんです。なのに、初めて夫婦で臨んだ日が流産の宣告だった」

クリスマス直前の出来事だった。数日後、年末年始の休暇を前倒して2泊3日で入院。時期的に会社にもバレずに入院できた。

「でも、そこは産科の病院だから、来る人は妊婦さんや産んだ直後の人ばかり。キツかった」

流産後3カ月は治療ができないが、それでも諦めず4度目のチャレンジ。後日、流産手術をした日と同日の出産予定日に第1子を妊娠した。

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