寝食を共にする勢いでスタートアップを支援 「ドコモ・イノベーションビレッジ」を率いる秋元副社長に聞く

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毎週行われているスタッフとのミーティング。開発の進捗や課題などを確認する

――参加チームなど、第1期チームとの違いはありますか。

 1期はアプリ系の会社が多かったが、今回はハード関連のサービスを目指すチームがあり、幅は広がっています。また、1期ではある程度の経験を積んだチームが中心でしたが、今回、たとえば「Wonder Bee」は会社設立すらしていない状態。よりインキュベーションプログラムらしいチーム構成になったと思う。

また、前回の1次審査は書類のみで、2次審査はプレゼン形式でした。今回は1次審査から9割の会社にスタッフが面接した。起業をするにあたって最も重要なのは「人」。できるだけ直接会って、人と向き合って審査しないとダメだと。その結果、今回も個性的なチームがそろった。最初から「グローバル展開を狙う」といったチームもあり、かなり期待できそうです。

寝食を共にする勢いで支援したい

――ドコモのイノベーションファンドの出資の方向性は?

 ドコモは通信以外の新領域として、金融・決済、ヘルスケア、M2M(機器間無線システム)、ネット通販などの育成を掲げています。まずはこうした分野に貢献できるサービスを探していく。最近、ファンドとして力を入れている分野も、ヘルスケア、教育、ビックデータ、クラウドなどの領域になっている。

NTT持ち株のファンド運用も重要。昨年4月にはNTTグループ全体の研究開発拠点「NTTアイキューブ」が北米でスタートした。NTTデータやディメンションデータ、NTTアメリカといった、海外でビジネスを展開するグループ企業に対し、新しいテクノロジーやソリューションを提供する役目がある。その中で、スタートアップとの取り組みもあり、出資の話も浮かんできている。ですので、われわれもアイキューブと頻繁にコミュニケーションをとり、彼らのビジネスを支援していく。現在も複数の案件を進めている最中です。

――今後、どのようなサポートを目指していきますか?

前回にも増して、参加チームと寝食を共にする勢いでやっていきたい。実際、ワーキングスペースでも、常駐というか、ほぼ宿代わりにしているチームも多いんですよ(笑)。

また、参加チームに対し、何をどのように工夫すればユーザーを増やすことができるのか。通信会社の視点だけでなく、具体的なアドバイスをするために、毎週のミーティングには社外のメンターの方々にも参加してもらっている。

今後の課題は知名度です。ドコモがこうしたプログラムを組んでいることを知らない方も多い。ただ、知名度を上げるためには、しっかりとしたサポートが受けられるんだ、と参加チームに実感してもらうことが重要。だから、近道はない。起業に対して迷っている方の背中を押してあげられるプログラムにしたい。そんな強い思いを持っています。

イノベーションビレッジはスタートアップを「ゆりかごからイグジットまで」サポートしていく。すべてのチームが成功するわけではないけれども、何度でもチャレンジして成功をつかむようなカルチャーを育てたい。やはり、少しでも日本のスタートアップ自体を底上げできれば、と思う。裾野が広がれば、自然に有望な会社も多くなるはずです。

*イノベーションビレッジ第2期に参加する6社のトップインタビューを順次、公開していきます。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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