起こるべくして起きた、靖国参拝という大事件 膨張する「嫌中国・韓国」感情の裏にあの男

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しかし、こうした“脱中国”は、大企業だからできることでもある。今や中国に進出している日本企業は3万社に上るが、うち3分の2程度は中小企業が占めているとされる。

「撤退しようとすれば、中国側から設備を含めた全資産を譲渡するよう求められるし、現地従業員に対する経済補償金、つまり割り増しされた退職金を支払う必要もあります。ただリストラの可能性が浮上しただけでも、経営陣が軟禁されてしまうケースは珍しくない。中小企業には、そんなリスクを乗り越えられるだけの体力も胆力もありません。日本では最近、そうした企業に向け、中国から離れるテクニックを指南するセミナーが盛況になっているほどです」(日本の総合商社幹部)。

侮れない、「野中・小沢」勢力の動き

尖閣諸島で繰り返される領海侵犯、防空識別圏の設定など、中国が打ち出す対日侵攻策はエスカレートするばかりだ。日本国内における嫌中国、嫌韓国感情は膨らむ一方で、週刊誌や夕刊タブロイド紙では、売り上げ部数を伸ばそうと、中韓たたきが過熱している。あるベテラン政治ジャーナリストには、「何でもいいから中韓を批判できるネタがほしい」「永田町の話題ではなく、少しでも中韓を絡めたコラムを書いてくれ」という無茶な注文がひっきりなしに届いているという。

安倍首相は、こうした世論を感じ取り、政権を安定させるために、わざと中国、韓国との関係改善を先延ばししているのではないか――。与野党問わず、そうとらえている国会議員は多い。さらに水面下では、中韓関係をエサにするかのように、激しい政治闘争が繰り広げられている。

「かつて『悪魔』と罵倒した政敵と、再び手を結ぶのか」

首相官邸スタッフはこう語り、自民党大物OBに気をもむ。意外かもしれないが、それは「脱原発」を訴え、国民の耳目を集める小泉純一郎元首相ではない。かつて「影の総理」と称されるほど絶大な権勢を振るった、野中広務元官房長官だ。官邸による警戒の強さは、小泉氏と同等か、それ以上に強いと言っても過言ではない。

「小沢一郎・生活の党代表のブレーンである平野貞夫元参院議員に、野中氏が接触している」

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