「電動自転車」の超進化が子育てママを救う理由 10万円超の高級品でもリピート需要が活発

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ビッケシリーズではカラーバリエーションは5~7色。カラーの構成も、ネイビーグレー、レトロレッドと名付けられた中間色で、街中やファッションになじみやすい。さらにサドルカバーやハンドルグリップ、チャイルドシートのカラーや柄も多彩で、好みに合わせてコーディネート可能となっている。

ショッピング用途の「イルミオ」。ごつさや生活感を感じさせずファッション性を重視(編集部撮影)

ファッション性の重視については、ショッピング用途の「イルミオ」からもうかがうことができる。前述の「ハイディ ツー」と同様に、こちらもファッション誌とコラボした電動自転車。荷物を入れるバスケットは大容量であるとともに、フォルムが円形で、フレームと共色なのでごつさや生活感を感じさせない。手元にも小さなバスケットが取り付けてあり、飲み物やスマホなどを入れることができる。

ベルトドライブを採用しているが、そのベルトの色が通常の黒でなく、タイヤとコーディネートされた色であるなど、細かいこだわりが見られる。

「子どもが大きくなって、子乗せから卒業した人をターゲットとした自転車です。いったん電動自転車を使ってしまうと、普通の自転車には戻れない。かといって、子乗せ用にいつまでも乗るのはかっこ悪い、という女性の声に応えました」(室伏氏)

10万円以上の高級品であるにもかかわらず、電動自転車のリピート率は非常に高いという。子どもの送り迎えという必要性がなくなっても購入されるとなると、性能だけではなく、ちょっとした便利さ、快適性、ファッション性へのニーズも高まると考えられる。実用品である自転車にも、おしゃれさは重要なのだ。

以上のように、パナソニックはコンビとの提携で子ども用シートの使い心地を確保し、親のストレスを軽くする細部のこだわりで差別化。対してブリヂストンはメカニックの工夫で安定感や走りやすさを追求するとともに、ファッション性にもポイントを置いている。なお自転車を購入する際には、販売店などに足を運び実際に使用感を確かめたり、試乗して決めるのがおすすめだ。

電動自転車の普及とともに増える事故の危険性

最後に、安全性について見ていきたい。これまで説明してきたように、メーカーでは独自の基準を設け、ハードの安全性については追求しているようだ。このことについては引き続き必要だが、今後電動自転車の課題としては、安全な乗り方やマナーについての啓蒙など、ソフト面の比重が高くなると思われる。電動自転車が普及し、主に高齢者ではあるが、電動自転車による事故件数も増えてきている。

パナソニック、ブリヂストンの両者とも、メーカー側としてはまず整備士のいる販売店を通じ販売することをはじめ、消費者に対しては販売時に乗り方の説明を徹底することを基本としている。

最初に思い切り踏み込んでしまうとスピードが急に出るなど、乗るうえでの基本的な注意事項があるからだ。また両者とも、教育機関・自治体からの依頼による交通安全教室に協力することが増えているという。社会的にも関心が高まっているということだろう。

子どもを乗せるなどして100kgを超えることもあり、また普通の自転車が最高時速16~18kmであるのに対し、電動自転車では18~20kmか、それ以上出ることもある。車体が重くスピードもある以上、衝突時の衝撃は普通自転車よりはるかに強い。自転車に乗っていた当事者が死亡する例が多いが、ぶつかった他者を死亡させてしまった事故も発生している。

マナーも普及してきてはいるものの、まだ全体に浸透するまでには至っていないようだ。歩行者通路を歩いていて、追い抜きやすれ違いの自転車のスピードに驚くことも多い。歩行者通路を自転車が通るのは、厳密に言えば法律違反となる。

電動自転車は確かに技術進化し、生活の利便性を上げてきたが、利用者数に比例して事故数も増加するようなことがあってはならない。日常的に使うものだけに、つい気を抜いてしまいがちだが、事故の危険性を他人事と思わず、つねに意識し続けることが重要だ。

圓岡 志麻 フリーライター

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まるおか しま / Shima Maruoka

1996年東京都立大学人文学部史学科を卒業。トラック・物流業界誌出版社での記者5年を経てフリーに。得意分野は健康・美容、人物、企業取材など。最近では食関連の仕事が増える一方、世の多くの女性と共通の課題に立ち向かっては挫折する日々。contact:linkedin Shima Maruoka

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