ネガティブな格付けアクション増加、08年総括と09年見通し《ムーディーズの業界分析》


コーポレートファイナンスグループ
SVP-リージョナル・クレジット・オフィサー 大槻栄美子

格付け対象の日本の非金融事業会社の格付けは、2008 年第3 四半期に引き続き、第4 四半期においても、ネガティブな格付けアクション(23 件) がポジティブな格付けアクション(5 件) を超えた。その結果、2008 年年間を通してもネガティブな格付けアクションの総数(37 件) がポジティブな格付けアクションの総数(30 件) を超えた。ポジティブなアクションが主流であった2007 年から、格付けの方向は完全に変わったことになる。

 ネガティブなアクションが急増している背景には、世界経済の先行き見通しの暗さ、急激な円高、原燃料価格の急騰後の急落、株式市場の低迷などにより、日本の事業会社の業績が悪化していることがある。

 急激に増加するリスクへの対応のため、企業は生産調整、在庫調整、不要不急の投資の先送り、生産拠点の統廃合や人員削減など、様々な対策を緊急に講じようとしているものの、金融市場や事業環境の変化の速度や規模は、これまでの経験や予想を超えている。厳しい事業環境は長期化する様相を呈しており、事業統合など抜本的なコスト削減に向けた追加的な対応も加速している。しかし、効果が出るには時間を要する可能性がある。

 世界的な景気低迷や円高は、ムーディーズが格付けを付与する事業会社のうち約3 割を占めるグローバル企業の収益力に大きな影響を与えている。これら企業の多くは、事業の地理的分散により、これまで相対的に安定した収益力を維持してきたが、事業環境は今後さらに悪化する可能性がある。

ムーディーズの格付け対象企業は、過去数年間に財務体質を改善し、相対的に強いバランスシートを維持してきた。しかし、収益力に大きな下方圧力がかかる中、負債水準は増加傾向にある。今後とも良好なバランスシートを維持できるかどうかは、格付けに重要な影響を与えよう。

また、資本市場からの資金調達が限られている環境下、日本の金融機関との関係強化は非常に重要な格付け要因である。ムーディーズの格付け対象企業は、金融機関との良好な取引関係を維持しており、日本国内市場ではまだ歴史の浅いコミットメントラインの新規設定や増額を行い、外部からの流動性原資確保の優先権を担保している。

 しかし、最近の市場環境の変化は予断を許さず、今後の変化の程度を測ることは非常に難しい。また、今後日本の金融機関の与信姿勢に変化の兆しがあるかどうかも、重要な要因である。

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1976年に創業し、90年代の渋カジブームを牽引したビームスが今も元気だ。創業以来赤字知らず。40年、最先端を走り続けられる秘密は何か。設楽洋社長への独占インタビューを掲載。