JR東日本のSuica、「QR決済」をどう迎え撃つ? JR九州はアリババと連携、私鉄でも動きが

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店舗での導入が容易なQRコード決済は中国の「アリペイ」や「ウィーチャットペイ」が海外で普及しているが、日本でも昨年から大きな盛り上がりを見せている。ソフトバンクとヤフーが合弁で展開する「PayPay(ペイペイ)」は昨年末に実施した「100億円あげちゃうキャンペーン」が、わずか10日間で原資を使い切るほどの人気ぶりを見せた。2月12日からは100億円キャンペーンの第2弾を実施中である。

こうしたスマホ決済サービスは、楽天が運営する「楽天ペイ」、LINEが展開する「LINE Pay(ラインペイ)」といったネット系に加え、ペイペイのほかにも多数ある。

QRコード決済にどう立ち向かう?

これまでICカード一辺倒だった鉄道会社の中にも、QRコード決済に関心を示す会社が出てきた。

沖縄都市モノレール「ゆいレール」は昨年6~7月に改札機でアリペイを利用可能にする実証実験を行った。ゆいレールは改札でもともとQRコードを利用しており、ほかの鉄道路線と連結していないことから導入が容易だった。

大手では、交通系ICカード「SUGOCA(スゴカ)」を運営するJR九州が昨年7月にアリペイを運営するアリババグループと提携した。アリババは自社の旅行サイトを活用して2023年度に中国から九州に送客し、JR九州は九州域内へのアリペイ導入を支援する。JR九州グループ内のドラッグストアやホテルではすでにアリペイによる決済が可能だ。

日本国内でもアリペイやウィーチャットペイなどを使える店舗は急速に増えている(撮影:今井康一)

アリペイを交通系ICカードのように乗車券として活用する可能性について、青柳俊彦社長は、「改札の仕組みをすべて変えないといけない」として、慎重姿勢を崩さない。ゆいレールと違い、路線網が複雑なJRでアリペイを導入するのは容易ではないだろう。しかし、券売機や窓口で鉄道切符を購入する可能性については「クレジットカードが使えるのだから、導入は難しくないはず。使用できるなら大いに結構」と言う。

私鉄では、南海電鉄が昨年8月から難波、関西空港など一部の駅で、アリペイやウィーチャットペイで乗車券や特急券が買えるというサービスをすでに実施している。「日本円の現金をあまり持たない中国人観光客の利便性向上を狙った」(同社)という。こうした動きは鉄道各社に広がっていくかもしれない。

スマホで手軽に決済できるのがQRコード決済の特徴だが、JR東日本もiPhone、アンドロイド端末の両方でスイカの機能が使える「モバイルSuica(モバイルスイカ)」を展開している。ICカードと同様に、読み取り機に近づけるだけで簡単に決済できる。ペイペイやラインペイなど簡単な決済を売り物にするスマホ決済サービスよりもさらに簡単かもしれない。会員数は、2019年1月末で約685万人に達した。

電子マネーでは圧倒的な存在感を示すスイカは、QRコード決済にどう立ち向かうか。昨年8月にはみずほ銀行の口座から直接チャージできる「Mizuho Suica(みずほスイカ)」というサービスも開始。また、昨年10~12月には赤羽駅でスイカなど交通系電子マネー専用の無人店舗の実証実験も行なうなど、JR東日本はスイカによるサービスの幅をぐいぐいと広げている。キャッシュレス戦国時代で覇権を握るには、サービス改善の手綱を緩めるわけにはいかない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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