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ブランドコンテンツとは
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ブランドコンテンツとは

ブランドコンテンツは、企業や団体のブランディングをサポートする東洋経済オンラインの企画広告です。

 「くまモン」のデザイナーとして、今や時の人ともいえる〈gooddesigncompany〉水野学さん。ポスターや企業ロゴ、商品開発、昨今では文具にまで才能を発揮するクリエイティブディレクターだが、実は手書きを重要なポイントと考えている一人。

 なぜ手書きを実践しているのか。そして、手書きは仕事のなかでどのような位置づけにあるのか。今もっとも熱い人物に話を聞くことができた。


水野 学
クリエイティブディレクター
good design company 代表取締役
慶應義塾大学特別招聘准教授
NTTドコモ「iD」、宇多田ヒカルなど、数多くのアートディレクションを手がける。また、中川政七商店のブランディングや「くまモン」のデザイン、そして自らが企画するショップ「THE」を展開するなど、今もっとも熱いクリエイティブディレクター。

日本語のつくりが潜在的に手書きに合う

───デジタル全盛の昨今、手書きの価値について、どう思われますか。

水野 デジタルの打ち文字と、手書きの文字は、どちらの価値が高いか低いかではなく、価値の種類が違うものだと思います。手で書いたほうが、人となりや感情が表れやすい。怒っているとか、喜んでいるとか、適当に書いているなとか(笑)、伝わりますよね。

もちろん、デジタルで打っても文体で人となりが表れますが、やはり手書きは筆跡や使ったペン、紙などによって、より情報量が多い。そういう意味で捉えるのであれば、書き文字のほうが価値があるといえるかもしれません。

───手で書くからこそ、多くのことが伝わる、と。

水野日本人は、もともと文字に対して造詣が深い民族です。漢字は表語文字(表意文字)で、アルファベットは表音文字。表語文字圏の人にとって、文字は絵でもあります。日本語の仮名は、漢字をもとにつくられているのですが、表音文字に限りなく近い。つまり、日本人は表語文字と表音文字をミックスして使い分ける文化をもっているわけです。

文字は絵であると考えると、絵がコンピューターで打たれるのは、何か違和感があります。表語文字圏の人は、文字に感情や意味を深く感じていて、潜在意識において手書きの価値を認めているのではないでしょうか。


伝えるための手書き。時には企画書までも?

───ご自身で、ここだけは手書きにするというものはありますか。

水野 お付き合いがまだ浅くて、自分という人間が相手によく伝わっていないときや、お付き合いは深いけれども、自分の思いをすごく伝えたいときは、手書きの手紙を書きます。年間50通から100通ぐらいは手書きの手紙を書きます。こんなことを言っちゃうと、これからメールを送れなくなってしまいますが(笑)。

───字が汚い人にとっては自分の字が恥ずかしく、そのせいで手書きの手紙を避けたがる人も多くいそうです。

水野 我が社に字が汚いスタッフがいるのですが、「それでも手で書きなさい。とくにお礼の手紙は手書きにするように」と言っています。そのほうが“伝わる”と考えるからです。字が汚いかきれいかよりも、思いや意味がどれだけ伝わるかのほうが重要です。

(字がきれいではないと名指しされた?スタッフさん、困惑。。。)

───伝わるということでは、ある大きな案件の企画書を手紙にされたことがあるそうですね。

水野プレゼンテーションは、そもそも相手に対して自分の思いを届ける手紙だと思っています。どんなに精密に美しくつくった企画書でも、相手に伝わらなかったら意味がありません。とくに毎日、たくさんの企画書に目を通している方にプレゼンする場合は、どういう状態のものを喜んでくれるのか、相手の気持ちを考える必要がある。

これは私が人の書いた企画書をよく見る立場になってきたから、余計に感じるのかもしれません。誰がつくっても同じに見えるなあと思うことが増えました。


紙が感じさせてくれる脳の役割

───手書きのほうが記憶に残りやすい、アイデアがひらめきやすいといった効用があると学術的にいわれます。仕事をされるうえで、それを感じることはありますか。

水野 諸説あるのではっきりしたことは言えませんが、従来の仮説であるところの右の「表現脳」と左の「言語脳」の両方を使えるのが、紙とペンです。

私の仕事上、文字だけでなく、絵を描けることがとても大事で、たとえば「市場のドーナツ化」という話をよくします。「ビジネスにおいて差別化という言葉が非常に取り沙汰されてしまったがために、みんなが周辺に逃げて、真ん中の空洞化が進んでいます。だから今、ど真ん中が求められています」ということなのですが、これは言葉で言うよりも、ドーナツの絵を紙に描いたほうが伝わります。絵や言葉だけでなく、矢印を引いたりしながら説明しています。

───紙の効用ですね。ほかに紙を使うメリットを感じられることはありますか。

水野私は紙というのは、外部記憶装置だと思っています。人間は自分がしゃべっている間に、何をしゃべりたいのかわからなくなってきて、あっちに行ったりこっちに行ったりすることがよくあります。そうならないために、紙に書き留めてそこに戻り、また、そこから広げていく。

これは、いわゆる左脳で思い浮かんだことを右脳でチェックして、右脳で思い浮かんだことは左脳でチェックして、ということになると思うのですが、それを打ち合わせの時間に何度も繰り返します。紙に書かれている情報は、単なるメモではなくて、右脳と左脳を行き来するためのシステムなのです。

私は打ち合わせ中に、筆ペンで書いたり、コピーらしきものを書いたりして、ものすごい量を書きます。それをあとでいつでも取り出せるように、デジカメで撮ってデータをストックしています。


同社のアイデアの源? 手書きが生むアイデア

───筆ペンや万年筆など、さまざまなペンをお使いですが、どのように書き分けているのですか。

水野 用途によります。打ち合わせスペースの壁は、磁石が付くようになっているので、メモを壁に磁石でとめることをよくします。そのときは、みんなが見られるようにするために、太く書ける筆ペンで書いて貼ります。

打ち合わせのときは毎回、メモを壁に貼ってみんなで考えます。1人の頭で考えることと、5人の頭で考えることを比較すると、5人の頭で考えたほうがいいに決まっている。だから、全員の頭の中を表に出して話し合う。つまり、壁が全員の頭になっているわけです。

───これはわかりやすいですね

水野打ち合わせというのは、一定の時間内にどれだけの成果を出せるかが重要ですから、なるべく時間を短縮して、みんなの頭を1つにしていくことが大切です。我が社の打ち合わせは、イコール「答え出し」になっています。時間内にすべてを決めるようにしていて、「持ち帰って考えましょう」というのはほぼゼロですね。

手書きのメリットをもう1つ挙げると、この“時間”というものがあります。手書きのほうがスピードが速い。デジタルの場合、入力する作業と出力する作業の2つが必要になりますが、手書きの場合は、書くことがすなわち出力になりますので、半分の作業量で済みます。

───ステーショナリーのブランド「STALOGY」を企画されたとか。それは手書きに適していますか。

水野 徹底的にこだわりました。「エディターズ」シリーズというのをつくったのですが、編集者や記者の方ってメモをたくさん取りますよね。だから、枚数を多くして368枚にしました。1年間、毎日1枚ずつでもしっかり書ける。ただ、ノート自体が分厚くならないように、薄く、かつ裏写りしにくい紙にしています。罫線も、ページが重なって初めて見えるぐらいの色の薄さ。できるだけ書くことをジャマしないように工夫しました。

エコが叫ばれる時代に、紙をどんどん使うことに対して、何となく抵抗を感じませんか。「裏紙を使っている企業がいい企業」みたいに思われている(笑)。うちの会社は一見するとムダ使いをしているように見えるかもしれません。でも私は「裏紙は使わないで」と言っている。それは裏がどうしても気になってしまうから。エコの観点からすると、ダメなのかもしれませんけど、書くことに集中したいのです。そんな書くことに特化したノートをつくりたかった。ページの端には、月日と24時間表示を小さく入れたので、日記としても使えます。

───最後に、企画タイトルを手書きしていただきたいのですが、こちらに大きくお願いします。

水野 これですか。あまり大きく書くのも。字はペンの細さとのバランスが大事なので、一番ベストな大きさで…。

この時、書いていただいたタイトルが、本編の題字となっています。

(撮影:今祥雄)