アームはモバイル端末以外にも拡がっていく 営業戦略責任者が語るARMアーキテクチャの未来
――なぜアームは、自社で半導体を開発・製造しないのですか。
われわれのパートナー企業は、アームと提携し共同してエコシステムを推進する立場を明確に打ち出している。私たちが半導体を作るとパートナー企業と競合し、顧客への価値提案そのものが意味をなさなくなり自己矛盾に陥ってしまう。
それこそが今のインテルが抱える問題点でもある。皆さんから、「インテル対アーム」という対立構図について聞かれることが多いが、実際はそうではなく「インテル対それ以外の半導体メーカー」という対立構造だと思う。
もっと正確に言えば、「インテル対半導体業界」になっていると思う。インテルは自社で半導体を開発しているため、業界全体がライバルになる。アームとの違いはそこにある。
アームは顧客ニーズに対し、迅速かつ小回りよく対応する任務を追っている。そのためには広範囲な産業および技術開発をカバーする必要があり、もっとも注力するべき投資は人材だ。自前で半導体を作ることになると、製造や生産拠点、工場への巨大投資が必要になってしまう。製造は半導体ファンドリー最大手の台湾TSMCとパートナー関係を構築しているので、アームは技術開発に注力する方針を明確に打ち出している。
パートナーの声をよく聞く
――開発ロードマップは、どのように作っているのですか。
ロードマップの作り方は進化している。アームのパートナー企業は幅広く、たとえば自動車分野に強いルネサスエレクトロニクスから、モバイル端末で高いシェアを持つクアルコム、さらに製品にも強みを持つサムスンなどがいる。それ以外の業界からもフィードバックを吸い上げることで、今後は何が求められているのか、どういう技術分野を強化するかが見えてくる。技術の全体的な方向性については、かなりの精度で予測できる。
細かなニーズを掘り下げていくと顧客ごとに内容は異なるが、たとえばグラフィックの処理部分では一定数の顧客の間では共通項となる部分がある。さまざまな業界のパートナーから要望を集めていくうちに、共通項を見出すことができる。半導体メーカーと競合していないからこそ、非常にオープンな形で必要な技術をフィードバックしてもらえる。そういう意味でも、アームは業界内でユニークなポジションにいると言えるだろう。
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