アームはモバイル端末以外にも拡がっていく

営業戦略責任者が語るARMアーキテクチャの未来

スマートフォン(スマホ)でシェア9割超――。パソコンでは米インテルの半導体が独占的な地位を占めているのと同様、スマホやタブレット端末において95%のシェアで採用されているのが英アームの技術だ。アームは半導体の製造を行うわけではなく、アーキテクチャ(基本設計)の提供に特化した企業だ。同社の「ARMアーキテクチャ」は、米クアルコム、韓国サムスン電子、米テキサス・インスツルメンツといった大手半導体メーカーがこぞって採用しており、スマホやタブレットを動作させる心臓部の半導体に広く搭載されている。パートナー企業からのライセンス収入がアームの収益源であり、売上高は右肩上がりで成長が続いている。
この巨大な黒子企業は、今後の成長領域として「IoTInternet of Things)」とサーバー分野を掲げる。自動車、物流、エネルギー、ヘルスケアなどあらゆる業界のシステムがインターネットにつながることでデータ量が増大。アームの活躍の場は拡がっていくのだという。アームで営業戦略責任者を務めるグローバル&コマーシャルデベロップメント担当バイスプレジデントのアントニオ・J・ヴィアナ氏に戦略を聞いた。

 ――なぜアームは、自社で半導体を開発・製造しないのですか。

 われわれのパートナー企業は、アームと提携し共同してエコシステムを推進する立場を明確に打ち出している。私たちが半導体を作るとパートナー企業と競合し、顧客への価値提案そのものが意味をなさなくなり自己矛盾に陥ってしまう。

英アームのアントニオ・J・ヴィアナ氏

それこそが今のインテルが抱える問題点でもある。皆さんから、「インテル対アーム」という対立構図について聞かれることが多いが、実際はそうではなく「インテル対それ以外の半導体メーカー」という対立構造だと思う。

もっと正確に言えば、「インテル対半導体業界」になっていると思う。インテルは自社で半導体を開発しているため、業界全体がライバルになる。アームとの違いはそこにある。

アームは顧客ニーズに対し、迅速かつ小回りよく対応する任務を追っている。そのためには広範囲な産業および技術開発をカバーする必要があり、もっとも注力するべき投資は人材だ。自前で半導体を作ることになると、製造や生産拠点、工場への巨大投資が必要になってしまう。製造は半導体ファンドリー最大手の台湾TSMCとパートナー関係を構築しているので、アームは技術開発に注力する方針を明確に打ち出している。

パートナーの声をよく聞く

画像を拡大
アームの業績は拡大が続く

 ――開発ロードマップは、どのように作っているのですか。

ロードマップの作り方は進化している。アームのパートナー企業は幅広く、たとえば自動車分野に強いルネサスエレクトロニクスから、モバイル端末で高いシェアを持つクアルコム、さらに製品にも強みを持つサムスンなどがいる。それ以外の業界からもフィードバックを吸い上げることで、今後は何が求められているのか、どういう技術分野を強化するかが見えてくる。技術の全体的な方向性については、かなりの精度で予測できる。

細かなニーズを掘り下げていくと顧客ごとに内容は異なるが、たとえばグラフィックの処理部分では一定数の顧客の間では共通項となる部分がある。さまざまな業界のパートナーから要望を集めていくうちに、共通項を見出すことができる。半導体メーカーと競合していないからこそ、非常にオープンな形で必要な技術をフィードバックしてもらえる。そういう意味でも、アームは業界内でユニークなポジションにいると言えるだろう。

関連記事
Topic Board トピックボード
人気連載
Trend Library トレンドライブラリー
  • コメント
  • facebook
0/400

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

Access Ranking
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • いいね!

※過去48時間以内の記事が対象

※過去1ヵ月以内の記事が対象

※過去1ヵ月以内の記事が対象

※過去1ヵ月以内の記事が対象

※週間いいね数のランキングです。

トレンドウォッチ
あのころ銀行は<br>無茶苦茶だった

『住友銀行秘史』の著者で元・住銀取締役の國重惇史、元イトマン顧問弁護士の河合弘之、元長銀取締役の箭内昇。平成の金融バブルの最中に起きたイトマン事件の真相と教訓を語る。