アームはモバイル端末以外にも拡がっていく 営業戦略責任者が語るARMアーキテクチャの未来

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 ――アームのライバル会社とは。

さまざまな形の競合があるが、インテルが驚異であることは間違いない。ただしインテルは、アームのパートナー企業に対しても驚異。インテルは企業規模が違うし、リソースや資本、製造能力や技術ノウハウなど、大企業だからこそ強い部分がたくさんある。現況を見るかぎりナンバーワンの半導体メーカーだし、製造技術もナンバーワンだ。ただ、それは半導体業界での話に過ぎない。正直に言ってしまうと、インテルはモバイル業界で波に乗ることに完全に出遅れてミスしている。

インテル以外のライバルでは、同業の半導体IP(知的財産)プロバイダの米ミップス・テクノロジーズや米テンシリカ、EDA(半導体設計支援)ベンダーの米シノプシスや米ケイデンスといった企業が挙げられる。しかしパートナー企業のイノベーションや差別化を推進し、今後の方向性を見据えた上でベストな価値提案を提供することに関しては、私たちが一番仕事をしていると思う。少なくとも私自身は、今のアームの位置づけに満足している。

拡大するアプリケーション

――主力のモバイル端末以外にも、アームを採用する市場は広がっていきますか。

たとえば車載センサにアームの技術が搭載されると、そのセンサのソフトウェアは他製品にも展開できる。車載センサがアンチブレークロックやナビゲーション、インフォテイメントなどの、複数のシステムとシームレスにつながるようになる。システム間の共通プラットフォームになれることが、アームの強みだ。

自動車以外の業界でも同様のことが言える。たとえばモバイル端末では、共通プラットフォーム上でイノベーションが促進されて付加価値を生むことができる。従来型の携帯電話にもアームの技術がベースにあったが、音声通話とテキストメッセージをする程度だった。それが今では、音声認識や画像編集、指紋認証や顔認証、音質も向上しており、すべてのイノベーションをアームが促進することができる。携帯電話や自動車だけでなく、それ以外のIoTInternet of things)でも言えることだ。

多くのモノがネットに接続されると、ここから新たなチャンスが生まれてくる。ネットが業界全体の成長を牽引し、新たな付加価値や新たな業界、市場が生まれることにもつながる。たとえばモバイル業界は携帯端末が中心だったが、今では新たなビジネスとしてアプリケーションプロバイダが登場し、新しいアプリを開発するビジネスが生まれている。それ以外にも、ファッション業界ではウェアラブル端末がファッションアイテムになり、端末ケースがビジネスになっている。今後はヘルスケアやエネルギー、運送など、すべての業界がネットとつながるようになっていくだろう。

これは端末の問題だけでなく、膨大なデータ量がやりとりされることで業界が大きく変革することも起こってくる。今後はサーバーやクラウド、企業のデータ管理にもアームが大いにかかわることになる。企業が抱える問題を解決するためにIoTで膨大なデータ分析をすることになるが、そうした企業の問題解決のプラットフォームを支えるのが、私どもになるはずだ。

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