刑事事件化が必至 創業社長辞任の加ト吉

刑事事件化が必至 創業社長辞任の加ト吉

冷凍食品大手の加ト吉が「循環取引疑惑」の調査結果を公表、創業社長が引責辞任する事態となった。

 注目された記者会見の場に「主役」の姿はなかった。冷凍食品大手、加ト吉の創業者で、半世紀にわたってトップに君臨した加藤義和・前会長兼社長は、心労が重なり2日前に緊急入院していた。「本来は前会長自身がこの場に出て、謝罪すべきと思う」。突然の後継指名を受けた金森哲治・新社長は、そう詫びるしかなかった。

 3月来、「循環取引疑惑」に揺れた加ト吉は4月24日、外部有識者による社内調査の結果を公表した。水産事業本部や東京特販部で行われていた不適切な取引は2001年度からの6年間で総額985億円。それに伴い抱えた不良在庫の処理などで150億円の損失も計上する。06年度決算は赤字転落が確実。売り上げが水増しされた過年度決算の訂正も必要になる。

 「対前年で1円でも売上高が上回らなければならないとの長年の方針が原因」。金森社長は売上高至上主義の弊害を指摘。さらに加藤氏のワンマン経営による風通しの悪さを不祥事の背景に挙げた。

 魚の行商から身を起こした加藤氏は、一代で加ト吉を四国随一の大手企業に育て上げた立志伝中の人物。地元テーマパークなどの再建にも手を差し伸べてきた。一方で、株式市場では自身と同名の個人会社がたびたび出没、大物投資家としても知られる。

 不祥事の責任を取り、加藤氏は取締役でない相談役に退いた。実弟の義清氏も副社長を辞任、顧問となった。役員退職金については「ありえない話」(金森社長)という。

 商社は告訴を準備中

 業者間で同じ品物の転売を繰り返すのが「循環取引」。加ト吉の調査では、水産事業担当の前常務(辞任)が単独で行っていたとされ、「元光」(香川県宇多津町)なる親密貿易会社が共犯格と目されている。参加企業は32社に上り、上場会社では岡谷鋼機も異常な取引に手を染めていた。

 「循環取引」の一部について、加ト吉は偽造印鑑が使われていたなどと被害者の立場を主張する。が、取引に介在した大阪市内の中堅商社は「そんなことはない」と反発。前常務をはじめとする加ト吉関係者の関与はもっと深いはずと見る。中堅商社は詐欺などで関係者の告訴を準備中で、問題は刑事事件化が必至。加ト吉ブランドがさらに失墜する事態もありうる。

(書き手:高橋篤史 撮影:今井康一)

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