うつぬけ精神科医が見た「子どもの不調」の背景 「家」を子どもの"ホーム"にする大切な考え方

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実は、こんなことをお伝えしている私自身、かつて7年間もうつを患った当人です。私がうつになったのは研修医時代ですが、そのきっかけは、日々の激務に加え、「自分は医師としてふさわしくないのでは?」「診断を間違ったらどうしよう」などと不安にさいなまれたからだと、その当時は思っていました。

でも今になって思えば、その“根本”は少年期にありました。この記事をお読みになっている方の参考になるかもしれないので、まずは私の当時に触れておきたいと思います。

私が小さい頃、両親はしょっちゅうケンカをしていました。母は大学卒業後に英語教師となり、私を妊娠したあと仕事を辞めていました。父は外資系のエリートサラリーマンです。父は仕事で多忙でしたから、母の関心はやがて子どもの私に集中するようになりました。

私は小4から塾に通い、多いときで週6日。日曜ごとに試験の成績が発表されるのですが、いい成績をとらないと母がいい顔をしない。それを気にした私はカンニングをしたりもしましたが、そんなことをしても気持ちよくありません。そして、だんだんそんな自分が嫌になっていき、「何のために勉強しているのか」疑問を抱くようになりました。

学校にも家にも身の置きどころがなく、自暴自棄の高校時代を過ごしたと語る宮島氏(写真提供:KADOKAWA)

それでも、「1校だけ」と受けた中高一貫の難関校・開成中学に合格します。入学後はラグビー部に入りましたが、実力は伸びず、やがて部活を辞め、家でゲームにはまりました。でも、家にいると母が怒るばかりで、まったく心が休まりません。

学校の試験には詰め込み暗記で臨んでいました。でも、高校になると実力テストではガクンと成績が下がります。そうなると学校もつまらなくなり、家でも落ちつかない毎日。家にいたくなくてバイトをしたり、髪を伸ばしたり、ピアスの穴を開けたりもしました。あるとき母に「勉強しなさい!」と包丁を持って追いかけられたことも。私は「大学なんて行くもんか」と、酒やたばこにも手を出し、まさに自暴自棄でした。

 その後、ある女医さんに憧れたことをきっかけに、「医者なら価値のない自分でも人の役に立てるかも」と思い立ち、運よく1浪後に防衛医大に受かりましたが、私の少年時代は不安定極まりない日々だったのです。

子どものメンタルを守る「親の考え方」

「今、心の不調を抱える子どもが増えている」とお伝えしましたが、その背景には、実はそうなる根本原因といえる「親子関係」が大きく関わっています。

先述のとおり、私自身子どもの頃、親子関係に苦しんだ一人です。当時、いい成績と学歴、地位ある職業に価値を見出していた親に育てられた私は、結局、親が望んだような仕事に就いたともいえますが、医者になってからも自分に自信が持てず、「自己肯定感の低い人間」になってしまったのです。

この記事を読んでいただいている方には、お子さんのことで今まさに悩んでいる方もおられるでしょう。そこでここでは、現在心の不調を抱えている、あるいは最近いつもと様子が違う子どもに対する「親の接し方」についてお伝えしておきます。

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