マクドナルド、「消えたメニュー表」が復活 新商品発売に合わせて全国で再開

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レジカウンターでメニュー表が復活する。写真は1日限定バーガーを出した今年7月(撮影:尾形文繁)

12月11日、マクドナルドは「クォーターパウンダー ホワイトチェダー」などの期間限定商品を発売した。実は、これと同時にレジカウンターから姿を消していたメニュー表を全国一斉に復活させている。 

大半の店舗のレジカウンターからメニュー表が消えたのは昨年10月から。翌11月の決算説明会で日本マクドナルドホールディングスの原田泳幸会長兼社長は、「お客様のベネフィットのためにやった」と話していた。メニューを見ながら商品を注文すると時間がかかり、後ろに並ぶお客にフラストレーションがたまるため、”メニュー表撤去”で商品の提供時間を早めるというのが、その目的だった。

カサノバ新社長の采配?

今回の復活ついて、「初めて店に来たお客様や不慣れなお客様から、ゆっくりとメニューを見たいという声があったことは事実」(日本マクドナルド広報)という。要は、商品の提供時間を早める方策として導入したものの、それを不満に思う客もいたため、一斉復活することになったわけだ。

カウンターのメニュー表と背面のメニューボードの内容を一致させる(撮影:谷川真紀子)

ただし、単純にメニュー表を復活させると、以前のように客の待ち時間が再び長引くことになりかねない

マクドナルドでは復活させるメニュー表と同じものが見られるように、この夏からレジカウンターの背面にあるメニューボードの変更を進めてきたという。そうすることで、「(メニューボードとメニュー表の両方で)注文する商品の視認性が上がる」(広報部)という。メニューを見たいという客の声に応えつつ、商品提供のスピードを落とさないようにする狙いがある。

今年8月、日本マクドナルドの社長兼CEOは、原田泳幸氏からカナダ出身のサラ・カサノバ氏に交代した。メニュー表復活は原田流を否定する新社長の采配かと思われたが、「今回のメニュー表の全店配置とトップの交代とは無関係」(広報部)ときっぱり否定する。

とはいえ、13年内に宅配を行う実験店舗を130まで増やし(9月末86店)、中食志向客の取り込み強化を狙うなど、徐々にではあるがカサノバ色も出始めてはいる。

カサノバ新社長はどんな采配を見せるのか(撮影:梅谷秀司)

足元の業績は厳しい。11月の既存店売上高は前年同期比で10.4%減と5カ月連続の前年割れとなっている。昨年の同時期に実施したハンバーガー無料のクーポン券配布など、販促活動を実施していない影響もあるが、他のファストフード店やコンビニとの競争も厳しさが増しているようだ。

13年12月期は既存店の苦戦が響き、2期連続の営業減益になる見通し。低迷から脱するために、カサノバ新社長はどのような手を打つのか。メニュー表の復活は”無関係”でも、今後、その手腕が試されることは間違いない。

又吉 龍吾 東洋経済 記者

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またよし りゅうご / Ryugo Matayoshi

2011年4月に東洋経済新報社入社。これまで小売り(主にコンビニ)、外食、自動車などの業界を担当。現在は統括編集部で企業記事の編集に従事する傍ら、外食業界(主に回転ずし)を担当。趣味はスポーツ観戦(野球、プロレス、ボートレース)と将棋。

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