次は初期の頃のルーシー。赤ちゃんのときから性格は変わっていないようだ。
ルーシーのまん丸の目は、このあと現在の形に変化する。この展覧会を担当した朝日新聞社文化事業部の松澤奈々子さんはこう語る。
「編集者が、この目はおかしいと指摘したら、シュルツさんは珍しく納得して、目の外側の線を半分にしたそうです。これはルーシーの兄弟だけに使われる描き方で、弟のライナスやリランも同じ目をしています」
日常の観察眼
新聞連載は毎日だから、過酷な仕事だ。アイデアは子供時代の思い出、自分の子供たちのエピソードなど、身の回りの出来事がヒントになっていた。
「並外れた観察眼を持っていたから、身の回りのことをこれだけユーモアあふれる作品に描くことができたのだと思います。すごい能力ですよね。一日中、漫画を描いていたように思われがちですが、机の横にはいつもバットやラケットが置いてあって、子供たちが誘いにくると仕事の手を止めて遊びに行ったそうです。そこからまた新たなアイデアが出てきたのでしょう。
仕事もプライベートも充実させて、なおかつ世界で愛されるものを作り出していたのです」と松澤さんは言う。
日本での「ピーナッツ」には、もうひとつ別の魅力がある。詩人の谷川俊太郎さんによる日本語訳だ。日本語と英語を見比べて口語英語を学ぶこともできる。今回、新たに訳したものが30点ほどあるそうだ。
「同時にふたりの子を愛せるかなあ」
次に1990年代の作品を見てみよう。
「スヌーピーはチャーリー・ブラウンの言葉に応えていますが、頭の中だけのセリフだから相手には届いていません。スヌーピーの言葉は、私たち読者に向けられています。2人の吹き出しの形は違っています。左をspeech balloon、右をthought balloonというそうです。互いに通じ合っていないようでいて、でも何となく通じ合っている面白さがありますね」と松澤さん。
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