東大出た「桜蔭の問題児」の壮絶だった44年 東大女子が抱える母親との葛藤

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田中の母方の祖母は、いわゆる教育ママだったという。長野県の田舎で暮らしていたが、娘と息子を絶対に通わせるという執念で、長野の名門校、長野県立松本深志高校に合格させた。母親はそこからお茶の水女子大へ。

「受験って一種の強迫観念とか恐怖感があるのです。この学校に入りなさい、って強制されると、入らなきゃダメだと思って、必死にやってしまうのです。

おばあちゃんは、特に学歴至上主義で、しかも東大じゃなきゃダメ。テレビでコメンテーターが意見を言うと『東大も出ていないのに偉そうなこと言うな』とか言うんです。私たちは『自分だって東大出てないじゃん』って突っ込むんです。誰かを批判して自分がすっきりするようなところがあり、学歴で人を判断する。私はそういうのを見ていて、すごく嫌だと思っていました」

ただの女の子だったらダメなのかと思いつつ

町で出会う女子高校生が幸せに思えた時期もある。勉強しないでちゃらちゃらしている子はかわいらしくて楽しそうだった。「桜蔭の子はみんなダサい」。田中の理想からはほど遠かった。

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「菊川怜ちゃんが出てきて、桜蔭にもかわいい子がいるじゃんと、なったけれども、やはり進学校だけにダサい。それで派手好きになってしまったかもしれません。勉強一辺倒は嫌。でも勉強してダサくなるのは損。スカートを短くして登校してました。豊田さんもそうでした。東大を目指すのではなくて、ただの女の子だったらダメなのか、と思いつつも、自分が得た知識は役立てたかった」

東大文1を志望したのは、海外の子と文通していて、外国に関わることに興味があったからだという。国連難民高等弁務官の緒方貞子に憧れていた。国連に入るには、文学部だと弱い。法律と経済なら、法学部がいいかと、文1を受験。現役合格を果たした。

大学に入学した田中は、高校時代と違ってのびのびと自由に大学生活を送っていた。ただし、東大女子に共通するように、この目標をクリアしたら、さらにまた何かを捕りに行くという傾向は変わらなかった。

「寂しさと不安が常にあって、自己肯定感が低く、男性に走ったりしました。また、モテる女になりたいという思いがありました」

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