「インフレが日本を救う」という本コラムに対して、眉をひそめる方が多いのではないだろうか?
一般の消費者の感覚からすれば、安くモノを購入できることはありがたい。筆者も、同じものを買うのであれば、できるだけ安く買うため、店を選ぼうとする。そして、企業も、製品価格を下げることを通じてモノを多く売ろうと、企業努力を重ねる。そうした家計や企業の行動の積み重ねの結果、モノの価格が下がっているのであれば、むしろ望ましいことのようにもみえる。
インフレとは、サービスを含めた一般物価が上がること
2012年末に誕生した、安倍政権は、デフレからの脱却を掲げた。同政権が掲げるアベノミクスによって、景気も戻っている。ただ、食料品やガソリンなどの値段が上がっており、かえって人々の生活が苦しくなっている、などとメディアで報じられている。インフレになることで、日本経済が本当に良くなるのかと疑問に思われる方も多いのではないか?
多くの人々が抱いている、そうした感覚は、理解できる。ただ一部のモノの価格が上がることは、現在、安倍政権が目指そうとしている「インフレ」とは異なることである。インフレとは、我々の身近なモノだけではなく、いわゆるサービスを含めた消費活動全般の価格の動きである。サービスとは、例えば外食、旅行、フィットネスクラブなどの月謝、そして家賃などが含まれる。サービスを含めた価格全般は「一般物価」という。
1990年代半ば以降、日本が苦しんできたデフレという現象は、サービスを含めた一般物価が長期にわたって下がっている状況である。つまり、インフレになるということは、サービスを含めた一般物価が上がることである。そして、サービス価格の変動には、サービスの提供に従事する、我々労働者の給料の動向が密接に関連する。
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