「インフレで、生活が苦しくなる」は本当か アベノミクス批判派は、どこが間違っているのか

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「インフレは日本を救う」とは、「賃金を含めた一般物価が上昇する状況に正常化する」ことで、日本経済の閉塞感がぬぐわれる、というのが真の意味である。実際に、戦後、長期間のデフレが続いている経済大国は、世界を見渡しても日本だけなのである。他国と同じように、一般物価が上昇するような状況となれば、再び多くの日本人の年収が増え続け、生活の豊かさを高められる、ということなのである。

それでは、なぜ日本だけで、賃金を含めた一般物価全体の価格が過去20年弱にわたり下がり続けているのか?これについては、さまざまな見方がある。ここでは、インフレ、デフレという経済現象を、「お金(マネー)」という存在を含めて、経済活動を俯瞰することを通じて考えてみよう。

「モノ、サービス、ヒト」と「マネー」との相対的なバランス

「モノやサービス、そしてヒト」という経済価値は、マネーによって値付けされていることは明らかである。このようにみると、一般物価とは「モノ、サービス、ヒト」と「マネー」との量の相対的なバランスで決まる側面があることがわかる。

「モノ、サービス、ヒト」の量に対する、「マネー」の量との相対的な変化によって、インフレとデフレが起きるということである。この「相対的な量の変化」を、より理解いただくために、天秤を使ってイメージ図で示してみた。

図の左側の秤には、モノ、サービス、それらを提供するヒトが乗っている。そして、右側の秤には、お金(マネー)が乗っている。物価の変動、つまり、インフレやデフレという現象は、この両者のバランスが変わることによって起きるのである。

この天秤の動きを想像すると、経済全体に存在するお金(マネー)が、モノやサービスなどに対して多いのか少ないのかというバランス(相対的な量の変化)が、一般物価の変化をもたらすことがイメージできるだろう。

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