40歳、「裏社会を本で伝える男」の非凡な人生 だからこそ僕は誰よりも友情を大事にする

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草下さん自身は現在もアンダーグラウンドをテーマにした本を出し続けている。

2013年には元暴走族のOBたちが経営する会社を描いた小説『半グレ』を講談社から出版、現在は冒頭でも紹介した『ハスリンボーイ』を『週刊ビッグコミックスピリッツ』で連載している。

「フリーランスとして他社で本を出すこともありますけど、会社には承認を得ています。ただ小説は考えものなんです。小説を書いてると執筆作業にのめりこんじゃうんですよね。それで他の仕事がおろそかになっちゃう。それはよろしくないので、今は小説をがっちり書くというのはやめています」

草下さんの作品は、フィクションにしろ、ノンフィクションにしろ、裏社会で生きる人たちへのしっかりした取材により成り立っている。どのように取材を敢行しているのだろうか?

取材の過程で絶対に守っている3つのこと

「古い友人の知人に話を伺うことが多いですね。取材前に友人からは

『面白いネタ持ってるけど、本当にヤバイから気をつけろよ』

とか言われることもあります。で、行ってみたら案の定ひどい目にあったりします(笑)。後から恐喝まがいのことをされたりね」

そんなときは相手が納得するまで、ひたすらなだめ続けるという。

「『殺すぞ』って恫喝されたりするのは珍しくないのであんまり怖くないんですよ。お約束みたいなところもあるんです。

人と接するときに曖昧な態度をとるのがいちばんよくないです。相手に見返りがあると期待させてしまったりね。最初に『この場の飲み代は払うけど、ギャラは払えない』とはっきり言っておいたほうがいい。そうしたらムッとされるかもしれないけど、深刻なことにはならないことが多いです。

あと、取材の過程で

『金をもらわないこと』

『女を抱かないこと』

『犯罪をしないこと』

この3つは絶対に守らなければいけないですね。道を踏み外さずにすみます」

アンダーグラウンドの取材をしていて、転落してしまう人は少なくない。

草下さんも若い頃は、

「もし自分が道を踏み外したとするならば、殺人をした先生のせいだ。先生のせいで人を信じられなくなった」

と思っていた。事件を都合よく免罪符にしていた。

「事件から十数年経って、彩図社に入って『裏のハローワーク』とか書きはじめたころ、実家に帰ったんです。そこでなんとなく親に事件の話を振ってみました」

次ページ両親が事件の顛末を教えてくれた
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