「たばこ休憩」を不公平と思う人に欠けた視点 法律や働き方改革の面から考察してみた

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まず、「職務専念義務」に対する解釈ですが、これを厳密に解釈すると、「業務時間中の私的行為は一切許されない」ということになります。しかし、少なからずの職場で、デスクにコーヒーやジュースを置いてそれを飲みながら仕事をしたり、小腹がすいたときにお菓子を口にしたりすることは許されているのではないかと思います。むしろ福利厚生としてお菓子や飲み物を提供している職場もあります。

パイロットや鉄道運転士など、一瞬の不注意が乗客の命に関わる職務は別に考えなければなりませんが、一般的なオフィスワークの職場においては、コーヒーやお菓子が黙認されるなど、「職務専念義務」は実務上、多少の「ゆとり」を持って運用されているというのが実情です。

このように「ゆとり」という考え方を前提としてあるがゆえ、コーヒーを飲む社員が職務専念義務違反として懲戒処分を受けたという話は聞いたことがありません。しかし、なぜ、たばこを吸う社員だけが目の敵にされ、問題視されるのでしょうか。

デスクにいる=仕事している?

この点、たばこ休憩が目の敵にされる理由は、「自席を離れて喫煙スペースに行く」からではないかと考えられます。コーヒーは自分のデスクで飲むから許され、たばこは喫煙スペースに行くから許せない、というのが多くの人の判断基準になっているのではないかと思います。

ここで冷静に考えていただきたいのは、「自分のデスクにいれば、イコール仕事をしているのか」ということです。自席に座っていてもコーヒーを飲みながら頭の中はボケーっとしているかもしれません。逆に、自席を離れて喫煙スペースに行っていても、たばこを吸いながら企画のアイデアを整理しているならば仕事をしているといえます。

一見、たばこ休憩が多く見えても、与えられた仕事をしっかりこなし、成果を出しているならば、雇用契約上の義務は果たしていると考えられ、職務専念義務違反にはならないのではないでしょうか。

もし、成果以前の問題として、社員に業務時間中は整然とデスクに向かうことを求めるのであれば、就業規則で「業務時間中は自分の持ち場を離れてはならない」と定めれば、たばこ休憩であろうが、コーヒーをいれに行くことであろうが、就業規則違反で懲戒処分の対象とすることは可能です。

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